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言論宗教の自由が保障され、ひとりひとりの人権が尊ばれ、共に生きることを喜ぶ、愛すべき日本の地であることを願う。

バーニー・サンダース「TPPに反対する四つの理由」TPP反対演説~分かりやすいというレベルじゃない。 TPPを題材に現代社会の歪みについて解説!

2016-11-09 23:24:45 | TPP

バーニー・サンダース「TPPに反対する四つの理由」TPP反対演説和訳表示

 

石崎 大望さんFBより
 

すごいなあ、TPPの問題点を、こんなに揺さぶるように語れるなんて。

TPPの分かりやすい解説というレベルじゃない。
TPPを題材に、現代社会の歪みについて解説している。

大企業が安い労働者を得やすくなるTPP。
つまり大企業のCEOや資本家が得をして、
労働者を困窮に追い込むTPP。
NAFTAでは100万人の雇用が増えると言われたが、
実際には70万人の雇用が減った。
中国との二国間協定では、270万人の雇用が減った。
米韓FTAでは、7万5千人の雇用が減った。
大企業が工場を海外に移転しやすくなったからだとサンダースは言う。

多国籍企業や製薬会社やウォールストリートが賛成しているTPP。
労働組合や環境団体や宗教団体が反対しているTPP。
つまり、社会的弱者の健康、安全、福祉、生存、幸福などを守る団体が反対し、
金儲けをしたい連中が賛成してるのがTPPなのだとサンダースは言う。

ISD条項。企業が国を訴えられるようになる。
タバコの害から子どもたちを守るための法改正を進めるウルグアイは、
フィリップ・モリスから訴えられている。
最低賃金を引き上げたエジプトはフランスの産廃処理会社から訴えられている。
原発廃止を決定したドイツはスウェーデンの電力会社から訴えられている。
国が国民の安全や福祉や健康を守ろうとすると、企業の金儲けの邪魔をするなと訴えられるのがTPPだとサンダースは言う。

こんな風な質問や演説が国会で行われたら、あるいは中継されたら、日本人だって目を覚ましていくかもしれない。日本の政治家だって、と、ちょっと思ってしまった。

ということは、やっぱり、自分たちの訴え方を、もっと研究していく必要があるんだなあ。サンダースの演説、研究しよう。

アメリカではトランプが大統領になっちゃったね。

 

 

 


11/9泡沫と思われた放言王 トランプの勝因は反グローバリズム〔日刊ゲンダイ〕

2016-11-09 21:32:24 | 政治 選挙 
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/193506/1より転載
 
2016年11月9日

泡沫と思われた放言王 トランプの勝因は反グローバリズム

なぜ熱狂的支持を集めたのか(C)ロイター
なぜ熱狂的支持を集めたのか(C)ロイター

「史上最低の醜悪」などと言われた米国の大統領選は大接戦の末、共和党のトランプ候補が制した。この結果に、株式市場が大暴落するなど、世界中が騒然としているが、背景を探れば、そこには必然的ともいえる米国の闇がある。

 確かにトランプの訴えはむちゃくちゃだった。口を開けば「メキシコとの国境に壁をつくる」「中国が雇用を奪っている」と他国を攻撃し、ワイセツ発言も酷くて「ピー」音をかぶせて伝えるニュース番組も多かった。さすがに、大新聞は一斉にトランプ批判に回り、発行部数上位100紙中、ヒラリー支持を表明したのが55紙だったのに対し、トランプ支持はわずか1紙だけだった。

 しかし、それでもトランプ人気は落ちなかった。最後の最後でリードを許していたクリントンを逆転した。どんなに暴言を吐こうが、スキャンダルが飛び出そうが、あきれるほど根強い支持層に支えられたのである。支持率は終始40%台をキープし、最後はフロリダなど激戦州で次々と下馬評をひっくり返した。ツイッターのフォロワー数は、ヒラリーの1005万人に対し1280万人と凌駕、トランプの演説を生中継すると視聴率が跳ね上がるという現象も起こった。
 

 

■疲弊したアメリカ国民が喝采、支持

 なぜ、他人の悪口しか口にしないトランプのような下品な男が、ここまでアメリカ国民から熱狂的な支持を集めたのか。

 トランプの主張は、ハッキリしている。一言でいえば、「排外主義」だが、それは「反グローバリズム」である。市場に任せれば経済はうまく回るとアメリカが30年間にわたり主導してきた「グローバリズム」と「新自由主義」を、真っ向から否定した。その訴えがアメリカ国民の心をとらえたのは間違いない。

 外務省OBの天木直人氏(元レバノン大使)がこう言う。

「もともとグローバリズムは、“勝ち組”の政策です。格差が広がり、希望を持てない人を増やしてしまう。アメリカ国民も疲弊してしまった。一握りの富裕層だけが富み、中産階級が崩壊しつつあります。だから、以前から大衆の不満が充満していた。トランプはその不満を上手にすくい上げた形です。トランプが『中国が雇用を奪っている』『雇用を奪うTPPを止める』と自由貿易を批判すると、聴衆は拍手喝采し、熱狂した。これは“サンダース現象”にも通じる話です。ヒラリーと大統領候補の座を争ったサンダースも、新自由主義を否定し、TPPを『破滅的な協定だ』と批判して支持を集めた。アメリカ大統領選を通じて分かったのは、行き過ぎた新自由主義とグローバリズムが限界に達しつつあるということです。今後アメリカは、大きな転換を迫られると思う。熱心なTPP推進派だったヒラリーが、国民の強い反発を目の当たりにして『今も反対、選挙後も反対、大統領になっても反対』とTPP反対に宗旨変えしたことが、この先のアメリカを物語っています」

 実際、新自由主義とグローバリズムによって、アメリカ国民の生活はボロボロになっている。安い労働力を求めて企業が海外に進出したために雇用は減り、その一方、安い商品が海外から流入し、アメリカ製は競争力を失ってしまった。グローバリズムに対するアメリカ国民の怒りと絶望が、トランプを押し上げたのである。大統領選で敗北したのは、新自由主義とグローバリズムだったのではないか。

 グローバリズムへの「反動」は、アメリカだけの現象ではない。世界各国で「保護主義」の動きが強まっている。自由貿易を進めたはいいが、どの国もヘトヘトになっているからだ。

 なのに安倍首相は、TPPを筆頭にした新自由主義を推し進めようとしているのだから、時代錯誤もいいところだ。もしTPPに参加したら、日本は決定的な打撃を受けてしまうだろう。筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。

「例外なき関税撤廃、自由貿易が大前提のTPPに参加したら、日本の産業と雇用が破壊されるのは必至です。たとえば、日本が強い自動車産業だって、とても全メーカーが生き残れるとは思えない。まず農業、林業、漁業は、安い外国産に太刀打ちできないでしょう。第1次産業が壊滅したら、地方経済は成り立たなくなる。今でもシャッター通りだらけなのに、地方は活気を失い、本当に死んでしまう。新自由主義とグローバリズムの本質は、一般国民を犠牲にしてグローバル企業を儲けさせることです。世界的な大企業は潤うが、大衆には恩恵がない。だからアメリカも、産業界はTPPに賛成し、多くの国民が反対している。それでも安倍首相はTPP参加を強行しようとしているのだから、どうかしています。百歩譲って、もしメード・イン・ジャパンが世界市場を席巻している時だったら、TPPに参加するメリットがあったかもしれませんが、国際競争力が低下している今、参加するのは狂気の沙汰です。日本の富と市場を、アメリカのグローバル企業に奪われるのは目に見えています」


サンダース現象も巻き起こった(C)AP
サンダース現象も巻き起こった(C)AP 


■グローバリズムをやめ、日本型を探せ

 いずれ世界各国に、「グローバリズム」を見直す動きが広がっていくはずだ。「保護主義」の動きが強まってくるのは間違いない。日本も大急ぎで、行き過ぎたグローバリズムと一線を画すべきだ。

 このままグローバルな競争に突入しても、過激なコスト競争に巻き込まれ、デフレ不況を悪化させるだけである。アベノミクスが「異次元の金融緩和」を実施し、経済対策に何十兆円もの税金をつぎ込んでも物価が上昇しないのは、過度なグローバル競争によって、国内にデフレ圧力がかかっているからである。

 そもそも、日本のGDPの6割は個人消費なのだから、一部のグローバル企業を強くし、多少輸出を増やしたところで、景気が良くなるはずがないのだ。

「この20年、アメリカのエージェントのような経済学者やエコノミストが、グローバルスタンダードだ、構造改革だと日本式の経済システムをアメリカ型に変えてきたが、果たして日本国民の利益になったのかどうか。大失敗だったのは、この20年の日本経済が証明しています。今からでも日本の状況に合った経済システムを探すべきです。今振り返っても、年功序列、終身雇用、系列といった日本型経営はある意味、合理的なシステムでした。雇用が守られるので、サラリーマンは結婚、子育て、マイホーム取得と人生設計を立てられた。将来不安が少ない分、消費もできた。ところが、グローバルスタンダードに合わせるべきだと雇用を壊し、非正規を増やしたために、将来不安が強まり、消費が増えなくなってしまった。最悪なのは、社内に人材と技術の蓄積がなくなったために、商品開発力まで落ちてしまったことです」(経済評論家・斎藤満氏)

 アメリカ大統領選でなぜ、「トランプ現象」や「サンダース現象」が起きたのか、日本はよく考える必要がある。
 


<関連記事> 

トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実

http://www.newsweekjapan.jp/watanabe/2016/11/post-26.php

トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実

by Yukari Watanabe

<知識層からときに「白いゴミ」とまで蔑まれる白人の労働者階級。貧困と無教養を世代を越えて引き継ぐ彼らに、今回の選挙で「声とプライド」を与えたのがトランプだった>(写真:筆者が取材したニューハンプシャー州のトランプの選挙集会)



 

 

 

 

 


「中国脅威論」はこうして作られた。新聞報道の巧妙な世論誘導〔MAG2NEWS 高野孟〕

2016-11-09 15:58:23 | 平和 戦争 自衛隊

まぐまぐニュース!http://www.mag2.com/p/news/226490より転載

「中国脅威論」はこうして作られた。新聞報道の巧妙な世論誘導

2016.11.06
takano20161104

 

「中国脅威論」はどのようにデッチ上げられるのか? ──日経新聞の手法を徹底検証する

日本経済新聞が連載した「習近平の支配」シリーズは、10月22日付の「闘争再び」第5回で以下のように書いている。注意深く読んで頂きたいのは、この文脈の組み立てである。(1)以下、番号を振った部分は要約ではなく全文引用である。

  1. 8月上旬、200隻を超す中国漁船が沖縄県・尖閣諸島近海に押し寄せた。
  2. 漁船には軍が指揮する「海上民兵」がいたとされ、一部は中国公船と日本の領海に侵入した。
  3. 福建省泉州を母港とする漁船の船長、周敏(44)も日中衝突の危険漂う現場にいた1人だ。
  4. 「たくさん魚が捕れるからだ」。尖閣近海に出向いた理由を無愛想に語る周の船にも、軍事につながる仕掛けがある。中国が独自開発した人工衛星測位システム「北斗」の端末だ。
  5. 衛星からの位置情報はミサイルの誘導など現代戦を左右する。「有事」のカギを握る技術だけに、米国の全地球測位システム(GPS)には頼れない。中国は2012年北斗をアジア太平洋地域で稼働させた。
  6. 周が「昨年、載せろと命令された」という北斗端末は、すでに4万隻の中国漁船に装備された。友好国パキスタンなど30カ国以上が使い始め、20年に衛星35基で世界全体を覆うという。
    (中略)
  7. 宇宙、空、海。超大国・米国と張り合うように、中国は独自の秩序を押し広げている。習は「中華民族の偉大な復興」を「夢」に掲げ「2つの100年」を実現への節目としている。共産党創立から100年の21年と、中国建国から100年の49年だ。
    (中略)
  8. 習が支配する中国は国際的な司法判断さえ「紙くず」と言い放つ。大国の威信を取り戻す夢は自己増殖し、世界のルールからはみ出しつつある……。

海上民兵とは何か?

(1)の「中国漁船が押し寄せた」のは事実だが、(2)の短い文章を通じて日経が読者に与えたがっている印象は、あの中国漁船の殺到は、実は漁業目的などではなくて、漁船員に紛れた海上民兵が軍の指揮の下に中国公船(日本の海上保安庁に当たる海警局の巡視船)と共に尖閣領海に侵入して日本に脅威を与えるために仕組んだ軍事作戦だったのだということである。はっきり言ってこれはフィクションである。

ところが面白いことに、この文章には特段の虚偽や間違いが含まれているわけではなく、むしろ文言の1つ1つは事実に基づいているとさえ言える。それなのに、このような文脈に組み立てられて、しかも本来必要な丁寧な定義や説明をすべて省くことによって、あの事件の裏には中国当局の邪悪な意図があったかのような印象を読者に植え付けるものに仕立て上げられている。実に巧妙な仕掛けで、「中国脅威論」はこのようにしてマスコミによって日々デッチ上げられているのである。

第1に、「漁船には……『海上民兵』がいた」のか?

日経記事は「とされる」と伝聞調で逃げているが、それは(3)で述べているように、あの時出漁した漁船の船長に取材までしたが確たる証拠はつかめなかったということだろう。しかし、漁船に海上民兵がいたことは間違いない。なぜなら「海上民兵は漁民そのもの」だからである。

そのことを理解するには、そもそも海上民兵とは何かを知らなければならない。日本では、海上民兵を漁民に偽装した何やら怪しい特殊な武装グループであるかに描くのが流行っていて、この日経記事は、そうはひと言も言っていないが、そのような印象を与えたがっているかのようである。

しかし、北京の駐在武官を務めたことのある自衛艦隊司令の山本勝也は、海上自衛隊幹部学校の戦略研究会コラム14年12月8日付No.056「海上民兵と中国の漁民」で次のように述べている。これは、当時、大量の中国漁船がサンゴを求めて小笠原・伊豆諸島周辺に押し寄せたことに関連して書かれたものである。

海上民兵という単語が独り歩きし、あたかも彼らが、中東情勢の文脈で出てくるような、宗教団体や政治団体等の「民兵」と同様に非政府組織の武装グループとみている人がいる。或いは一般の将兵を超える特別な戦闘力を持った特殊部隊、例えば、映画「ランボー」に出てくるコマンドゥのような怪しい戦闘集団の兵士が「漁民を装って」潜入し、秘密の作戦により敵をかく乱するといったストーリーを思い描いている人もいるようだ。

しかし実際の海上民兵はそのようなものではない。端的に言えば、海上民兵は漁民や港湾労働者等海事関係者そのものであり、彼らの大半は中国の沿岸部で生活している普通のおじさんやお兄さんたちである。「海上民兵が漁民を装う」というのは大きな誤解であり、漁船に乗った「海上民兵は漁民そのもの」である。さらに付け加えると、海上民兵はれっきとした中華人民共和国の正規軍人であり素性の怪しい戦闘集団というのも大きな間違いである。

海上民兵とは、主として沿岸部や港湾、海上等を活動の舞台とする民兵の通称である。中国の国防や兵役に関する法律では「中国の武装力量は、中国人民解放軍現役部隊及び予備役部隊、人民武装警察部隊、民兵組織からなる」とされている。端的に言うと普段は他に職業を有し、必要に応じて軍人として活動する、いわゆる「パートタイム将兵」である……。

民兵が民兵として、つまり軍隊として行動する場合、国際法に則り、定められた軍服(階級章などに「民兵(MingBing)」を示す「MB」が付加されているほか人民解放軍現役部隊に類似)等所要の標章を着用して活動する。戦闘員である民兵が「自己と文民たる住民とを区別する義務を負う」ことは中国を含む国際社会の約束である。 仮に、人民解放軍現役部隊の将兵や民兵が、戦闘員としての身分を明らかにせず、「一般の(民兵として活動していない、非戦闘員である)漁民」に紛れ込んだり、一般の漁民を盾にして活動することがあるとすれば、中国は国際社会から強い批判を浴びることになるだろう……。

つまり、海上民兵は、軍制に位置付けられているという意味では正規の軍隊であるが、実際には予備役のそのまた外側にあって普段は漁民、船員、港湾関係者等々として生活し、有事には召集されて主に海上輸送などの補助的な任務に当たることになっている。従って、日経記事(2)が「『海上民兵』がいた」と書いていること自体は正しい。漁民の中には海上民兵の有資格者が多く混じっていて不思議はないからである。

作戦命令を与えられていたのか?

第2に、日経記事がその海上民兵を「軍が指揮する」と形容しているのは、一般論としては正しい。山本が言うように、彼らは、パートタイムとはいえ、法律によって中国の軍制に位置付けられたれっきとした「正規軍人」なのだから、ひとたび有事に召集された場合は軍の指揮下で行動して当たり前である。

しかしだからといって、8月の漁船殺到事件に当たって、軍が彼らに具体的な作戦任務を発令していたかどうかは全くの別問題で、その可能性はゼロである。なぜなら、これも山本が指摘しているように、彼らが軍人として公海上や他国の領海にまで侵入して作戦行動をとるには国際的な戦争法規・交戦規則に従って軍服を着用し民兵であることを示す標章も明示しなければ、国際法違反の単なる無法行為になって、捕虜になることすらできない。あの事件を通じて、そのように組織だった海上民兵の行動は兆候すらなかった。

ところが、そのような説明抜きに「軍が指揮する海上民兵がいた」とだけ書くと、軍によって何らかの任務を与えられた海上民兵が漁民に紛れて襲ってきたかのような印象が醸し出される。

第3に、ではその何らかの任務とは何であったかと言えば、日経によれば、少なくともその一部が「中国公船と日本の領海に侵入した」ことであるかに示唆される。「中国公船と」という表現がまた曲者で、これだと「中国公船と一緒に」、それと共謀してわざと、あるいは一部漁船が中国公船の庇護の下で、「日本の領海に侵入した」かのようにも読めてしまう。

しつこく言うが、一部漁船が「中国公船と日本の領海に侵入したのは事実である。しかしその両者の関係がどうであったのかは「と」だけでは分からない。

実際には、本誌No.852「中国と『一触即発』のウソ。実は関係改善で、日中首脳会談の可能性も」で述べたように、中国公船は「日中漁業協定」に基づく「暫定措置水域」の取り決めに従って、禁漁期が明けて「金儲けしか考えない数百隻の中国漁船の中には尖閣の(日本側が主張する)領海内に乱入する者が出かねないので、それを防ぐために出動」(中国側説明)したのであり、確かに漁船の一部と中国公船が尖閣領海内に入ったには違いないが、それはそこに入った漁船を領海外の暫定措置水域に押し戻すために公船が行動しただけのことであり、別に両者が相携えて入ってきたわけではない。

しかも、尖閣は中国のものであるという中国本来の主張からすれば、日本が主張する尖閣領海に中国漁船が入っても放置して好きにさせておくこともできるのだが、一応、日本の領海主張を尊重して余計なトラブルが起きることを防いだのである。

こうして、日経記事(2)の短い文章に、いくつもの仕掛けがほどこされていて、「中国は怪しい、危ない」と読者に思わせるように仕組まれている。

北斗システムの端末は軍事用?

次の(3)と(4)の文章は謎めいている。日経は、わざわざ福建省泉州の漁港まで取材に行って、8月に出漁した船長を掴まえてはいるが、彼のコメントは「たくさん魚が捕れるからだ」のひと言である。それ自体は真実で、彼らはその目的のために暫定措置水域に殺到したのであって、それ以外の目的はなかった。推測するに、その船長が「我々はたくさん魚が捕れるから出て行っただけだ。海上民兵? そりゃあ漁民の中にはその資格を持った奴はいるが、別に尖閣水域に入れと軍から命令が出ていたわけではない」というようなコメントをしたとすると、それを丁寧に全文引用すると、取材意図と違ってしまうので、「たくさん魚が捕れるからだ」という部分だけを切り取ったのだろう。しかし、これでは前後の文脈上、全く意味をなしおらず、単に記者が泉州まで取材に行って船長の話を聞いたのだという「臨場感の演出に役立っているだけである。

そこで話は急転直下、中国が独自開発した人工衛星測位システム北斗」の端末が、この船長の船にも装備されているという件に飛び移り、「やっぱり中国漁船は怪しいのだ」との印象を作り出そうとする。

(5)(6)では「衛星からの位置情報はミサイルの誘導など現代戦を左右する。『有事』のカギを握る技術だけに、米国の全地球測位システム(GPS)には頼れない。中国は2012年北斗をアジア太平洋地域で稼働させた。周が『昨年、載せろと命令された』という北斗端末は、すでに4万隻の中国漁船に装備された」と、いかにも軍事目的で大量の漁船に端末が配備されたかのように書き立てる。

しかし、GPS はそもそも軍民両用技術というか、軍事用に開発された技術を一部民需用に開放した軍民転換技術であって、それはインターネットや衛星デジタル通信などと同様である。中国が自国製GPS=北斗の運用に入って、それを船舶航行の安全管理のために漁船にまで順次配備したとしても何の不思議もない。それが、このように、そもそも怪しい漁船に「軍事につながる仕掛け」としての北斗GPS端末を「載せろと命令された」という具合に短絡的に文章を接合すると、ますます中国漁船が危険な軍事任務を背負わされているかの虚像が膨らんでしまう。

その延長で(7)で「宇宙、空、海。超大国・米国と張り合うように、中国は独自の秩序を押し広げている」と書くことで、日経記事は、「米国と張り合うことがいけないことであるという冷戦的価値観を主張する。つまり中国が独自のGPSを開発して漁船にまで端末を配ることが、邪悪な意図によるもので、(8)「世界のルールからはみ出すもの」だというのである。

ところが「GPSは元々アメリカの軍事用システムであるため、民間や他国の利用には一定の制限が設けられる事が多い。そのため、より自身の利益に適った独自のシステムを保有しようとする動き」(wiki)が中国のみならず欧州連合ロシアインドトルコナイジェリア等々に広がっているのが世界の現実で、実は日本でさえも自民党・民主党両政権を通じて「国家基盤としての……日本独自の高精度な位置測定衛星を打ち上げる準天頂衛星システム計画の整備」(同上)が進められてきた。日経は、中国はそういうことをして米国中心の秩序に逆らってはいけないという立場に立っている。

付け加えれば、日経(8)は「中国は国際的な司法判断さえ『紙くず』と言い放つ」と、中国が国際仲裁裁判所の南シナ海問題での判決を無視した態度を「世界のルールからはみ出」そうとしていることの傍証として挙げているが、米国が国際海洋法条約を批准せずに自国には世界の海を自由に航行する独自の権限があるかの「世界のルールからはみ出す」振る舞いをしていることについては問題にしていない。

危ないのは中国の漁民そのもの

前出の自衛艦隊司令=山本は、そのコラムの中で、「海上民兵は、中国の一般的な漁民そのものである。ただし、ここで誤解してはならないのが、漁民といっても彼らは我々の身近な日本の漁師さんたちのイメージとは程遠いということである」と述べている。

何が「程遠い」のかと言えば、「中国国内、特に都市化の進んでいない地域では、中国自身が『最大の発展途上国』と認めるように、衣食住が足りて法と秩序に安穏とした生活には程遠い地域が多く」、特に貧しい漁村では、「『水滸伝三国志演義に出てくるような刃物を振り回したり、手の届く距離の相手の顔面に向けレンガを投げつけるような激しく派手な喧嘩」が日常茶飯事である。

そういう荒くれ者の中国漁民にとって、「海洋は何者からも邪魔されない生活の全てである。海上に引かれた観念上、概念上の線や区画など彼らの目には映らない。ましてや他国の領海や排他的経済水域、漁業規制などは他人事である。官憲による厳格な取締り、或いは自分たちと異なる集団によって物理的に操業ができない限り、自由に操業する権利があるものと信じている。国内の取り決めや国際約束を順守し法と秩序に基づく生活が長期的な繁栄につながると考える人々とは異なる考えの持ち主である」。

これには中国政府も手を焼いていて、2012年12月に韓国の排他的経済水域において韓国海洋警察による法執行活動に対し、違法操業中の中国漁民が抵抗して韓国海洋警察官を刺殺する事件が起きた際には、『人民日報』傘下の国際メディア「環球時報」が社説で次のように述べた。

中国は世界最大の漁民グループを有し、海岸線も長く、人口も世界一である。しかし、中国近海の漁業資源は枯渇し、近年の操業エリアは公海へと拡大している。漁民は漁具を購入するための元手を回収しなければならない。漁民に漁業規律を厳格に守らせることは中国近海といえども難しく、中国政府が宣伝教育により彼らに黄海上の中韓漁業協定を厳格に順守させることは容易なことではない。漁民はコストを回収し利益を上げるために様々なことを考えており、考慮の中には漁民自身による身の安全も含まれている。

中国人は一般的に韓国人よりも貧しく、中国人の教育レベルは韓国人ほど高くない。中国の漁民に外交官のような品の良さを求めることは現実的ではない。

山本はこれを引用した後、次のように結論づけている。

このような中国漁民の現状を踏まえると、中央軍事委員会のコントロールの下に国家の意思に基づき活動する海上民兵よりも、私利私欲で動いている自由気儘な中国漁民こそ、国際公共財(グローバルコモンズ)である海洋にとって最も懸念すべき存在である。

これが正しい結論である。日経記事のように、軍の意思で動く海上民兵という怪しい武装グループが領海侵犯を繰り返しているという現状認識に立てば、これを海上保安庁、それで間に合わなければ自衛隊の力で抑えつけるしか方法がないということになる。実際、日経は日本国民にそう思い込ませようとしてこんなデマ記事を載せている。しかし、金儲けしか頭にない、ならず者のような中国漁民が韓国や日本の漁場を侵し領海侵入さえ厭わないということが東シナ海・黄海における不穏の主要な問題であるならば、日韓中による共同の漁業資源管理とその遵守のための海上保安当局の相互協力が喫緊の課題となる。

日経は、そういう本当の問題に目を向けさせることなく、徒に中国との軍事対決を煽っている。

image by: Flickr

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

 

 

 

 


福島第一原発の事故に伴う費用について~新電力事業者にも負担求める案、孫社長「根底からおかしい」

2016-11-09 06:13:19 | 福島、原発

 <!-- 新電力事業者にも負担求める案、孫社長「根底からおかしい」 -->

 http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2909849.htm?from_newsrより転載

新電力事業者にも負担求める案、孫社長「根底からおかしい」

 「ソフトバンクグループ」の孫社長は、経済産業省が福島第一原発の事故に伴う費用について新電力事業者にも負担を求める案を示していることに対し、「根底からおかしい」と厳しく批判しました。

 福島第一原発の事故に伴う賠償などの費用が想定を上回っていることから現在、経済産業省は電力自由化で参入した新電力事業者にも負担を求める案を示しています。この案に対し、新電力事業に参入している「ソフトバンクグループ」の孫社長は「その考え方は根底からおかしい」と厳しく批判しました。

 「古い業界を守るために、過去の遺産を新しいところに押しつけるということを意味していて、新しく、本来伸びるべき分野の芽を摘んでしまう」(ソフトバンクグループ 孫正義社長)

 そのうえで、孫社長は「バランスよく多くの人の意見を聞いて、議論をしてほしい」と述べ、政府に対し、慎重な議論を行うよう求めました。(07日23:18)

 

 

 

 


映画化された『知事抹殺』・・・”あの日”も佐藤栄佐久福島県知事のままであったなら、メルトダウンも起きなかったかもしれない。

2016-11-09 05:55:03 | 福島、原発

 

 

推薦の言葉

「あの日」も佐藤栄佐久福島県知事のままであったなら。

何度思ったか。3.11の日も「佐藤栄佐久知事」のままだったなら、今の福島は、そして日本はまったく違っていたはずだ、と。東電の津波対策の先送りを許さず、メルトダウンも起きなかったかもしれない。人々の側に立って、国や東電と真っ向から闘っていたはずだ。 
この国の司法はありもしない罪をねつ造して、その「知事」を「抹殺」した。「国策」に抗うと国はここまでするのかと驚きを禁じ得ないと同時に、この国の司法の闇や荷担するメディアの罪、そして「国策」の愚かさも白日に曝される。 
同時に希望の映画でもある。佐藤栄佐久氏の無実とこれからの氏の再起への期待がスクリーンに広がる。佐藤栄佐久氏のこれからの福島再起動に、私も参加したいと思う。

飯田哲也(環境エネルギー政策研究所 所長)

 

西日本新聞 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/editorialist/article/287164より転載

映画化された「知事抹殺」

 
「抹殺」とは「意見や事実を無視する。存在を否定し消し去る」(大辞林)との意味だ。誰の身にも起きてほしくない。そんな言葉を冠したドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」が完成した。

 2006年まで18年間、福島県知事を務めた佐藤栄佐久さん(77)の著書「知事抹殺」(平凡社)がベースだ。佐藤さんの50年近い友人で、同県郡山市で企画会社を経営する三田公美子さん(73)が呼び掛け、それぞれの友人25人が製作資金を出し合った。

 佐藤さんは06年、収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。映画はその前後を追う。県発注ダム工事で建設業者に便宜を図った見返りに実弟の土地を8億7千万円で買い取らせたという容疑だ。佐藤さんは否認したが、12年に最高裁で有罪が確定した。

 任意調べの段階で検事が実弟に発したという「知事は日本にとってよろしく
ない。いずれ抹殺する」が著書や映画の題名になった。

 佐藤さんは自民党参院議員から知事になった。元々保守系だが、東京電力福島第1、第2原発の検査記録改ざんや事故隠しをきっかけに、国の原子力政策に批判的になる。自民党政権で機運が高まっていた道州制も拒絶した。「物申す知事」の一人だった。

 一連の言動が「よろしくない」のか。裁判は奇妙な経緯をたどる。実弟の土地はその後、商業用地として買い取り価格より高額で転売された。確定判決となった東京高裁判決は収賄額をゼロと認定し、佐藤さんに「利益を得る認識はなかった」と一審判決から減刑したが、換金の利益があったとして有罪は維持した。

 安孫子亘監督は事件当時の映像を使おうと報道各社に当たったが、提供したのは共同通信だけだったという。メディアの在り方も含めて問題提起する映画でもある。

 三田さんは「まっとうな政治家を誰かの都合で抹殺していいのか。日本に民主主義はあるのか」と訴える。今月22日の郡山市を皮切りに東北地方から全国へ上映活動を広げる計画だ。

 


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ドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」公式サイト  eisaku-movie.jp/

 ドキュメンタリー映画「『知事抹殺』の真実」予告編

 
真実を追うドキュメンタリー

ひとりの知事が
政治生命を絶たれた不可解な過程を、
一次資料にもとづき映像化

   

前代未聞の空虚な有罪判決

2006年9月、5期18年に渡り、県民とともにに福島県を築いてきた佐藤栄佐久知事は、何者かが作り上げた「謎の収賄事件」により突然辞任を強いられる。

裁判の過程で明らかになっていく事実、調書の矛盾。 裁判所は、知事に利益を得る認識が無く収賄額は0円、という前代未聞の有罪判決を出す。検察の主張の前提は全て崩れ、一体何の罪で有罪になったのか。報道は操作され、ゆがんだ情報に国民が惑わされていた。

どうしても、佐藤栄佐久を政界から抹殺したかったわけとは。なぜ、原発に近づくものが消えていくのか。

国策に異議を唱えた代償か

佐藤栄佐久は、中央政界での経験をもとに、独自の政治スタイルを確立。国に頼らない、地方色を生かした国づくりを進めてきた。そして原発立地県として、その安全神話が空っぽであると気づいた時から、巨大な力との果てしない戦いは避けられなかった。

市町村合併、道州制そして原発問題、押し寄せる国策に問題提起することの代償。闘う知事と呼ばれた佐藤栄佐久は、自身の身を持って証明することとなる。

突然の辞任から逮捕、関係者への事情聴取、裁判に至るまでの検察側によるマスコミ報道の信用性。報道されなかった真実が、佐藤栄佐久の証言でいま明らかにされる

 

推薦の言葉

保守本流が暴いたこの国の病巣

 ふるさとを守るためなら、財界であれ政府であれ、どんな大きな力とも対峙する気概を秘めているのが保守主義者だ。佐藤栄佐久氏は当初、東電といい関係を築こうとした。それを裏切る事態が再三発生したために、厳しく臨まざるをえなくなったのだ。
 そして、全く覚えのない「知事の汚職事件」。収賄額ゼロという前代未聞の「有罪判決」ののち、大規模な検察不祥事が浮上して氏の事件が改めて注目されたところに、原発事故が起きた。保守本流の人の剛直が、この国の病巣を暴いたのだ。
 私の直感が生涯に一度だけ、間違わなかったことがある。一審判決を待つ、初対面の氏に、「無実を信じています」と断言したのだ。
 ふるさと復興の道はいまだ遠く険しい今、氏の言葉を聞く意味は大きい。

池田香代子(ドイツ文学翻訳家)

収賄事件など断じて起こりようがない

佐藤栄佐久さんと私は日本青年会議所の活動を通して、約10年間 親密にお付き合いさせていただきました。その後も時々お会いしておりましたが、私と佐藤栄佐久さんとの長いお付き合いでの彼の人柄はまじめで正義感が強く、非常に頭の切れる、それでいて出しゃばらない、どちらかというと不器用な後輩でありました。収賄事件など断じて起こりようのない人物でありました。 
それだけに参議院議員・18年の県知事、その後のご苦労は如何ばかりかとお察し申し上げます。 
このようなことが2度と起こらないためにも、多くの方に事件の真実を理解していただきたいと思います。

栄佐久さんのこれからの心豊かな人生を祈念いたします。

小沢一彦(横須賀商工会議所 名誉会頭)

歴史は栄佐久知事を忘れない

2011年3月11日以降、世界は福島を知ることになった。ただ、それ以前の福島を、あるいは3・11の表象に回収されきることのない福島の別な側面をどれだけの人が知っているのだろうか。佐藤栄佐久元福島県知事は、いまも、分断され、忘れ去られる多様で豊かな福島の結節点に立つ歴史上の主要人物であることは間違いない。職を辞して10年、裁判が終わっても、街なかでは「ちじ!」「えいさくさん!」と呼びかけられる。昭和から平成にかけて5期18年にわたって知事を務めた存在感はいまも大きい。その言葉は、いまや世界史の上に深く刻まれることになった福島を語る上でいまも、これからも、必ず参照されていくものとなるだろう。

開沼博(立命館大学准教授)

ズシンと胸にこたえる重い内容

「知事は、日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」取り調べ中、検事が発した言葉だ。
佐藤栄佐久元福島県知事。18年の在任中、原発立地県の知事として、その安全性に疑念を持ち、東電・政府と一貫して厳しい対峙を続けてきた。2008年、突然身に覚えのない収賄容疑で逮捕。有罪に。1年後の二審判決で、収賄額ゼロだったとして「実質無罪」の内容だったが、なぜか有罪。知事は抹殺された。明らかに意図された冤罪である。
その後、2011年のあの福島大原発事故で、知事の疑念は現実のものとなった。が、最高裁への上告は棄却された。知事の正しさは証明されたが、人間佐藤栄佐久は抹殺されたままだ。
「司法の中立・公正とは何なのか?」「日本は民主主義国なのか?」ズシンと胸に応える重い内容だが、今こそ、すべての日本人にこれを観て考えてもらいたい、必見の作品だ。日本人の勝負は、これからである!

下村満子(ジャーナリスト)

検察による凶悪犯罪!?

 それにしてもひどい事件である。そしてこわい事件である。私も検察による冤罪事件を何件も取材している。検察は強引にストーリーをでっちあげて、これは、と狙った人間を無理やりにストーリーにはめ込んで犯罪者に仕立てる。だが、どの事件も検察の思い違いにせよ、検察が疑いを抱くきっかけ、手掛りらしきものはあるのだが、佐藤知事“抹殺”は、疑われる事柄が全くないのに逮捕され、起訴され、有罪とされた。そして佐藤知事が検察のデタラメストーリーを認めないと、彼の少なからぬ支持者たちが拷問まがいのひどい取り調べを受けて自殺未遂、そして自殺者も出た。これはまぎれもなく検察による凶悪犯罪である。

田原総一朗(ジャーナリスト)

ニッポンが抱えている深き闇を鋭くえぐりだす

村木厚子事件をはじめ検察の特捜事件の実態が次々に明るみに出たいまなら佐藤栄佐久知事の事件も無罪を勝ち取っていたにちがいありません。ご本人の自白調書への署名や弁護側の法廷戦術の誤まりなど検察側に付け入るすきを与えてしまった事も返す返すも無念でなりません。そして検察の言うがままに報道するメディアの姿勢も厳しく問われて然るべきでしょう。どこの国の司法に得べかりし利益がない、収賄ゼロの贈収賄事件などあるというのでしょうか。ニッポンという国が抱えている深き闇を今回のドキュメンタリー映画が鋭くえぐりだしてくれたことに心から敬意をあらわしたく思います。

手嶋龍一(外交ジャーナリスト・作家)

知事を抹殺する平和な国の「怪奇映画」を観よう。

こんなにも善意の露わな人を抹殺して、それで安穏無事を願うのか?
善意の人じゃないか、見るからに、そして語る物語も…この人は一県の「長」であり、地域の民を「代表」する人だ。その人を「国」が軽々と「抹殺」する、そのことを怒った人たちが、この映画を作った。その「怒り」が俺の「胸腺」にストレートに入ってくる。
本当なのか、原発にブレーキをかけた知事がでっちあげの事件で逮捕され、「知事の座」を追われる、という話、まさかと思いながら映画に涙する。
桜の花の下で「涙」する福島のオジサンを見切って、俺たちは無事安穏に、この国に生きていけるのか?地震で半壊した我が家のガラガラを片付けながら、「地震列島」に原発を造り続けるこの国の、「謎のドラマ」を目をかっぴらいて観る。

中谷健太郎(九州 由布院盆地 亀の井別荘)

この知事を抹殺してほんとうによかったのか

今さら言っても仕方がないけど、佐藤栄佐久さんが知事をそのまま続けていれば、原発事故への対応もちがっていたし、福島もいくらかは前に進めていたのに。
時々福島に戻る僕に、福島の人が同じことを言う。いったい、誰が何のために栄佐久さんを抹殺したのかな。
僕もそれが不思議でならない。だって栄佐久さんは原発政策の是非など言ってたこと、ないもの。栄佐久さんが繰り返し言っていたのは、何があっても県民の安全を第一にする、地方自治を確立して共生の社会を創る、福島の美しい自然を未来に手渡してゆく、それだけだよ。今回の原発事故で、それこそ全部抹殺されたけどね。

西田敏行(俳優)

 

出演 佐藤 栄佐久

1939年福島県郡山市生まれ。福島県立安積高校、東京大学法学部卒業。
日本青年会議所での活動を経て1983年、参議院議員選挙初当選、87年大蔵政務次官。88年福島県知事選挙に出馬。初当選、5期18年の間、県民の絶大な支持を受け「地方分権・地域主権」の旗印の下、道州制、原子力エネルギー政策、数々の国策に真っ向から意義を唱え「闘う知事」と呼ばれた。
2006年、降って湧いたような「汚職事件」で辞任。逮捕。本映画はその背景と事実を描く。

監督・撮影 安孫子 亘

「映画の制作を決意し、初めて佐藤栄佐久氏にお会いした。
罪を犯す人ではないことは、すぐにわかった。未だ冷めることのない栄佐久氏の国造りへの情熱が、大量の資料と共にマシンガンのように私に浴びせられた。
2006年突然の失脚。どうにもならない過酷な特捜の手段に、自決を決意した心境は誰にもわからない。この映画でその憂さを晴らせるとは、到底思っていないが、国民すべての人に、この事件の真相を知ってほしい。
命がけで日本を変えようとした佐藤栄佐久を世界中の人に知ってほしい。」

プロフィール

監督・撮影 安孫子亘/ナレーション 高橋春樹/音楽 野崎洋一/エンディング曲 佐藤孝雄「本当のこと」/音楽コーディネート DAIJI/録音 沼尻和夫 本橋大輔(アフタービート)/デザイン 株式会社ネギ/製作デスク 塩谷奈津紀/プロデュース ナオミ/企画 三田公美子/製作 株式会社ミルインターナショナル