水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

☆時代劇シナリオ・影車・第八回☆不用普請(11)

2009年01月13日 00時00分00秒 | #小説

      影車      水本爽涼          
     第八回 不用普請(11)

38. 江戸の街通り(一筋の広い道)・朝
     場面、フェード・イン。無惨に晒された堀田達の死骸と立て札。そ
     れを取り囲んで騒ぐ町人達の野次馬多数。中に、仙二郎や宮部
     の姿もある。
    宮部  「また、影車ですか…。これじゃ、私達、捕り方は、いりませ
         ん」
    仙二郎「それは云えます。お上は後手、後手ですからねえ(笑って、
         カメラ目線で)、困ったもんですよ、本当に…」
    宮部  「そういや、影車の話、奉行所じゃ全く話に上りませんが、何
         故なんでしょう?」
    仙二郎「それは難しい質問ですなあ…。まあ、私が思うには、実害
         がないのが、まず第一点。それと、晒されるのが毎度、悪
         い奴らですからねえ。お上も何も云えないっていうか、触れ
         たくないっていうか…、どうも、その辺りの事情でしょうな」
    宮部  「仰(おっしゃ)るとおりです…(得心した様子で頷いて)」
    仙二郎「さあ、役人が来ないうちに行きましょう。後々、面倒です…」
    宮部  「そうしますか…。毎度のことですが、私達も役人なんです
         がねぇ…」
     仙二郎、小笑いして場を離れる。後ろを追う宮部。カメラ、二人の
     歩き去る姿をロングに引き、俯瞰して撮る。
39. 立て札
     立て札に一枚の紙が五寸釘で刺されている。そこに書かれた"手
     筈を受けりゃ地獄へ落ちるのよぉ”の墨字を、カメラ、アップ。
    N   「手筈を受けりゃ、地獄へ落ちるのよぉ…」
40. 江戸の街通り(一筋の広い道)・朝
     カメラ、ふたたび仙二郎達の歩く姿を俯瞰して撮る。
     テーマ音楽。場面、フェード・アウト。
                            第八回 不用の普請 完

               流れ唄 影車(挿入歌)    

            水本爽涼 作詞  麻生新 作編曲

            なんにも 知らない 初(うぶ)な星…
             健気に 生きてる 幼(おさな)星…
              汚れ騙され 死ねずに生きる
                悲しい女の 流れ唄

              酒場で 出逢った 恋の星…
             捨てられ はぐれて 夜の星…
              いつか倖せ 信じてすがる
                寂しい女の 流れ唄

             あしたは 晴れるか 夢の星…
            それとも しょぼ降る なみだ星…
              辛い宿命を 嘆いて越える
                儚い女の 流れ唄


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