水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

☆時代劇シナリオ・影車・第九回☆追っ手(6)

2009年01月19日 00時00分00秒 | #小説

      影車      水本爽涼          
     第九回 追っ手(6)

   風丸  「今のところ、めぼしい話もないから、そうさなあ…。その女
        を探ってもいいな」
   火丸  「それはいいとしてだ。その女、どこへ出没するか、その辺
        りを詳しく聞き込む必要がある」
   土丸  「そうだな…」
   風丸  「ふぅ~、随分と冷えてきやがった。夜啼き蕎麦でも食って
        体を温めるとするか?」
   火丸  「おう、それはいい。向こうの大筋に屋台が出ている筈だ」
    三人、立ち上がり、大筋へと向かう。孰(いず)れも町人風の着流
    し姿に身を窶(やつ)している。
11. 江戸の街通り(一筋の広い道)・夜
    犬の遠吠えS.E。S.E=ウォー、ワンワンと鳴く犬の声。屋台
    が見える。伊賀・三人衆、町人になりきり、賑やかに語り合いな
    がら屋台へと近づく。
12. 蕎麦屋の屋台(外)・夜
    又吉が葱を刻んでいる。風丸、土丸、火丸の三人、暖簾を上げ、
    床机へと座る。
13. 蕎麦屋の屋台(内)・夜
   風丸  「ふぅ~、冷えるねぇ。親父さん、かけを三つ頼む」
   又吉  「へぃっ! 毎度!!」
    と即座に応じ、支度を始める又吉。
   土丸  「付かぬ事を訊くんだが、この辺りで瞽女(ごぜ)は見ない
        かい?」
   又吉  「(一瞬、ギクリとするが)ははは…、そう云われましても
        ねえ。瞽女(ごぜ)さんに限らず、今時分は、人通りが
        滅多とありやせんからねえ…(笑って暈す)」
   土丸  「そらまあ、そうだわな。夜分だからなあ…」
   火丸  「昼中(ひんなか)、店で聞いたほうがいいと思うぜ(土丸
        の方を向いて)」
   土丸  「違えねぇや…(小笑いして)」
   又吉  「(鉢を置きながら)へいっ! お待ちっ!!」
    三人、箸を割って食べ始める。暫くして風丸、置いてある竹筒
    に入った七味を多めに鉢へ入れる。続けて、土丸、火丸も入れる。
   又吉  「正月に入って、めっきり冷えやすねえ」
   風丸  「そういや、そうだなぁ…」
   火丸  「その割に雪は舞わねえが…」
   又吉  「あっしは助かりやす(小笑いして)」
    三人、「そりゃ、そうだ」と頷いて、蕎麦を啜る。


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