おおよそ、人は多かれ少なかれ物事をした見返りを求める。いや、私はそんなことはなく純粋に…などと思っている人でも、自分でも分からない深層心理の中には、そういった気分が隠れているのだ。だから100パーセント潔白な人はいない・・ということになる。もちろんその逆に100パーセント悪い人もいない・・と言える。
とある会社の退社時である。
「頑張るじゃないか、川田(かわた)君!」
「これはこれは、飯久保(いいくぼ)さん! そんな訳じゃないんですが…」
「ははは…そんなことはないだろ、ボーナス前でっ!」
「分かります?」
「そりゃ、分かるさ。いつもは我先(われさき)にと退社する君がだよ?」
「ははは…バレましたか。いやぁ~、今回は多めに頂戴(ちょうだい)したいんですよっ! 実は、妻の買物で臨時の出費が…」
「で、頑張って見返りを・・かい?」
「はい、まあ…」
半月後、社員達にボーナスが支給されたが、残念なことに川田のボーナスは、ぅぅぅ…と泣けるほどだった。それに比べ、日々、頑張り続けた飯久保には倍近くの額(がく)が支給された。
見返りは、求めるものではない! という教訓だろう。
完