水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-76- 見返り

2018年04月21日 00時00分00秒 | #小説

 おおよそ、人は多かれ少なかれ物事をした見返りを求める。いや、私はそんなことはなく純粋に…などと思っている人でも、自分でも分からない深層心理の中には、そういった気分が隠れているのだ。だから100パーセント潔白な人はいない・・ということになる。もちろんその逆に100パーセント悪い人もいない・・と言える。
 とある会社の退社時である。
「頑張るじゃないか、川田(かわた)君!」
「これはこれは、飯久保(いいくぼ)さん! そんな訳じゃないんですが…」
「ははは…そんなことはないだろ、ボーナス前でっ!」
「分かります?」
「そりゃ、分かるさ。いつもは我先(われさき)にと退社する君がだよ?」
「ははは…バレましたか。いやぁ~、今回は多めに頂戴(ちょうだい)したいんですよっ! 実は、妻の買物で臨時の出費が…」
「で、頑張って見返りを・・かい?」
「はい、まあ…」
 半月後、社員達にボーナスが支給されたが、残念なことに川田のボーナスは、ぅぅぅ…と泣けるほどだった。それに比べ、日々、頑張り続けた飯久保には倍近くの額(がく)が支給された。
 見返りは、求めるものではない! という教訓だろう。

                               完


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