水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-85- 劇的

2018年04月30日 00時00分00秒 | #小説

 現実なのに、まるでドラマか映画を観ているような予想外の結果となる状況を劇的・・と人は言う。ほとんどの場合、好結果での幕切れが多く、ぅぅぅ…と泣けるケースとなりやすい。
 とあるスタジアムで、決戦となるサッカーの試合が行われている。満席近い人々の熱気が場内に溢(あふ)れ、歓声は割れんばかりだ。相手チームに対し、ホロハリビッチが指揮するチームは前半が終わった段階で0-1という厳(きび)しい試合を余儀(よぎ)なくされていた。このままでは、空(むな)しい結果となる…と、サポーターの誰もが思っていた。
「ははは…大丈夫!! まあ、見ていなさいっ! 必ず勝つ!!!」
 そのとき、サポーターとしてスタジアムに陣取っていた一人が、大らかな悲観を微塵(みじん)ほども感じさせない声で言い切った。試合はその男の言ったとおり、後半終了直前とアディッショナル・タイムで2点を取り、チームは勝った。まさに、絵に描(か)いたような劇的な勝利だった。多くのファンが、ぅぅぅ…と泣いた。予言した男も、大泣きしていた。
 劇的は、やはり泣けるのである。

                               完


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