水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

泣けるユーモア短編集-60- 粗製乱造(そせいらんぞう)

2018年04月05日 00時00分00秒 | #小説

 物は作ればいいっ! という性質のものではない。要は、粗製乱造(そせいらんぞう)が弊害(へいがい)を齎(もたら)す・・ということである。そういう物は物とは言わず、単なるモノに他ならない。そういった無益(むえき)でつまらないモノを安易(あんい)に多量に作ったとしても世の中はよくならず、ためにもならない・・と言っても過言ではないだろう。それどころか、有害物へと変化することにもなるから怖(こわ)い。
 老人会で出合った二人の顔(かお)馴染(なじ)みの会話である。
「観(み)たい番組が減りましたなっ、最近!」
「ああ…。フツゥ~~の、どうでもいいドラマが多くなりました。バラエティは面白いのもありますがな…」
「チャンネル数が多すぎて追いつかないから、粗製乱造になるんじゃないんですかな、きっと…」
「はぁ。それに、いい番組でも3ヶ月とか半年とかでしょ? ズゥ~~っと続く番組が減りましたよね」
「そう! 粗製乱造の弊害ですよっ!」
「これも回り回れば、文明が進歩し過ぎた弊害なんでしょうな」
「そうそう! それにしても事件モノが多いですなっ! まあ、演じられる方々に責任はない訳ですが…」
「そうそう、そうそう! 問題は作り手側です。事件モノの粗製乱造は世の中を悪くする・・ってことが作り手側に分かっていないっ!」
「そうそう、そうそう、そうそう! 粗製乱造は世の中を悪くするっ! まあ、視聴率を重く見るスポンサーの有りようもですが…」
「そうそう、そうそう、そうそう、そうそう! いい番組ですよっ!!」
 そのとき、二人に割って入った老女がいた。
「お二人(ふたり)の会話も粗製乱造ですよっ! 五月蝿(うるさ)いったら、ありゃしないっ! なにが、そうそう、そうそうよっ!!」
 注意された二人の老人は、泣けるような顔で押し黙った。

                               完

 ※ 作品が粗製乱造とならないよう、私も注意したいと存じます。^^


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