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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-21- 文明の進む方向

2018年09月13日 00時00分00秒 | #小説

 文明の進歩とともに私達は快適に暮らせる時代を手に入れた。快適に暮らせれば、言わずとも愉快な気分で心地よく生きられる・・ということになる。だが、しかしである。ここで問題が派生(はせい)する。快適にさえ暮らせれば文明は果(は)てしなく進歩していいのか? という素朴(そぼく)な疑問が生じるのだ。文明の進む方向の問題である。進む方向によって人の愉快な気分は阻害(そがい)され、逆に不愉快 極(きわ)まりない事態にも立ち至る訳だ。
 高級車を脇道に止め、二人の男がようやく稲が色づこうとする田園地帯の細道を歩きながら話をしている。
「昔に比べりゃ、随分(ずいぶん)、楽(らく)になったようです。それに収穫量も増えたと聞きますが…」
「ああ、そりゃそうでしょ! 今は牛が泥田(どろた)の中を動き回る時代じゃないですからなぁ~」
「昭和30年代前半ですねぇ~。あの頃はコンバインもなく、手で刈ってられました…」
「そうそう! 長閑(のどか)な時代でした」
「あの頃に比べますと、文明も進歩しましたが…」
「そこ! なんですよ、問題はっ! 文明の進む方向ですっ!」
「? と、言われますと?」
「つまりは、本当に進歩したのか? ってことです」
「? …どういうことです?」
「確かに収穫量も増え、人手(ひとで)もいらない時代になりました。しかし、ですよっ!! 二毛作が一毛作となり、飽食(ほうしょく)の時代ですっ! 農業だけでは食べられず、減反(げんたん)政策で休耕(きゅうこう)地、耕作放棄(こうさくほうき)地ですよっ!」
「それで進歩したのか? ってことですか…」
「そう! そのとおりっ!!」
 二人はそんな会話をしばらくしたあと、車の人となり、美味(うま)いステーキを高級レストランで、しこたま頬張(ほおば)った。
 今の文明の進む方向は、愉快なこの二人の感じだ。^^

                                 


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