水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

愉快なユーモア短編集-31- 昔の子供遊び 5> 鉄砲遊び

2018年09月23日 00時00分00秒 | #小説

 さらに続くが、5>鉄砲遊びがある。誤解されるといけないから説明するが、金属の犯罪めいたものではなく、竹木(ちくぼく)を工作して遊び道具にした鉄砲だ。
この鉄砲には各種あり、特に竹で作るものが大半である。挙(あ)げただけでも、水(みず)、吹き玉(だま)、杉の実(み)、紙などがあり、紙鉄砲(かみでっぽう)に至っては木で作るものもある。竹の場合は普通の真竹(まだけ)を使用する場合と女子竹(おなごだけ)[メダケの別名]を使う場合がある。杉の実や吹き玉鉄砲の場合は女子竹だ。女子竹の遊び道具の作り方は簡単で、川原から採(と)ってきた女子竹の節(ふし)と節の間(あいだ)を切り、竹筒(たけづつ)と押し手[手で持てるくらいの竹筒に押し棒の細い竹筒を押し込んだもの]を作る。当時は長閑(のどか)な時代で、子供が鉛筆削りや工作で常用した肥後守(ひごのかみ)という子供用ナイフを使って作ったものだが、今の厳(きび)しい時代は刃物と見られて所持を許されないかも知れない。まあ、それはそれとして、作れば、あとは遊ぶだけだ。ここでは、メジャーな吹き玉鉄砲の場合を説明したい。例によって、説明して欲しいと思わない! 方は、シャワーでも浴びていただけば、それでいい。^^
 まず女子竹の筒に吹き玉[リュウノヒゲと呼ばれる植物の実]を先端に詰め込み、押し棒の細い竹筒で押す。次に、別の吹き玉を先端に詰め込んで勢いよく押し棒の細い竹筒で押せばいいだけだ。竹筒の内部の空気が圧縮され、その圧力が最初に詰め込んだ吹き玉を鉄砲風に{ポンッ! ? …ピシッ! ? …バシッ! ? …という音だったか、当時からかなり経つので忘れてしまった^^]押し出すといった具合だ。数人で遊べば面白い遊びである。余り威力がないから、相手の玉が当たった記憶もなく、音で遊ぶのが味噌だ。あとの各種鉄砲も作り方の差こそあれ、ほぼ同じである。木で作る紙鉄砲だけは他の鉄砲類と違い色彩を異(こと)にした。鉄砲型に切った木片を蝋燭(ろうそく)の蝋で塗って工夫する場合と、工作した鉄砲型の木片の先に輪ゴムをつけ、輪ゴムを伸ばして引き木の先にはめ込み、その間に1cm×5mmぐらいのやや厚めの紙片を挟(はさ)んで引き木を動かし、紙片を飛ばす場合とがある。
 数人の子供が吹き玉鉄砲で遊んでいる。音だけがパシッ! ピシッ! とするだけで、お互いの姿は見えない。それでいて、妙に愉快で楽しい子供達の顔がある。数十分後、音が急にしなくなった。一人の子供が訝(いぶか)しげに他の子供を捜(さが)し始めた。
「? おかしいなぁ~? …音がしないぞ」
 最後まで残っていた子供は、すでに遊びが終わっていることを知らなかった。皆(みんな)、家へ帰ってしまい、一人だけ忘れられたのだ。^^
 鉄砲遊び・・こんな長閑で愉快な昔の遊びもあった。

                                 


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