水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (45)限界

2019年08月02日 00時00分00秒 | #小説

 人は自分の限界を超えようとする。有り難いことにその限界には決まった到達点がなく、無限に続く・・という点だ。これは、限界を超えようとする人々にとっては助かる。いくらでも努力できるからだ。到達点があれば、それ以上が望めないため、ある意味で到達点がないことによって人々が助かる・・とも言える。ただし、大食い競争で限界を超えてギネス記録になっても、腹具合を悪くして病院に搬送された人が果たして限界を超えられたかどうか? は不確かだが…。^^
 暑い日が続く午後のとある公園である。二人の男が我慢するかのようにベンチに座り続けている。助かることは、ベンチが幸いにも木陰にあるということだ。
「暑いですなぁ~~!!」
「ええ、まあ…。でしたら、お宅(たく)も、なぜっ?!」
「いや、毎日お見かけするんで、私もそれを訊(たず)ねようと思っとったんですっ!」
「ははは…そうでしたか。でっ?」
「その訳ですかな? 訳は限界を超えよう! と頑張っとる訳です、実は…」
「いや、実は私も、です。ははは…」
「昨日(きのう)は2時間17分で立ちました」
「私は2時間35分です」
「ほう! なかなかやられますなっ!」
「ははは…お互いにっ!」
 二人は、その後も公園の木漏(こもれ)れ日(び)の下で頑張り続けた。だが、お互いを意識したためか、数時間後、二人の姿は病室へと移っていた。幸か不幸か二人の命に別状はなく助かった。
 限界も、助かる程度にしたいものだ・・という忠告めいたお話である。^^

                                


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