水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (55)日陰(ひかげ)

2019年08月12日 00時00分00秒 | #小説

 猛暑(もうしょ)が続いている。もぅ~~しょ~がないっ! などとダジャレを言っている場合ではない。生命の危機が叫(さけ)ばれる酷暑(こくしょ)なのである。それでも助かるのは、日差しを遮(さえぎ)る日陰(ひかげ)があるお蔭(かげ)だ。海水浴でもビーチパラソルとか呼ばれる日避(ひよ)けの大傘(おおがさ)を砂浜に立てるが、この日陰がなければ、灼熱(しゃくねつ)の太陽の下(もと)、コンガリと焼けた美味(おい)しい秋刀魚(サンマ)に海水浴客が変身してしまうことは疑う余地がない。^^
 近所のご隠居二人が縁台(えんだい)将棋を指している。
「暑いねっ!」
「ああ、暑い暑いっ! だが毎年、この日陰で指さないと夏が来たと思えねぇから不思議だっ!」
「ちげぇ~ねぇ!」
「この日陰があると、どういう訳か落ち着けて助かるなっ!」
「だなっ! そこへ、スイカの冷えたスライスなんぞが運ばれてくりゃ~尚更(なおさら)だっ!」
 隠居はそう言いながら、催促(さいそく)するかのように少し離れた台所の方を見た。すると、息子の嫁がいいタイミングでスイカの冷えたスライスを手盆(てぼん)に乗せて運んできた。
「冷たいうちに、どうぞっ!」
「これは、助かるっ!」
 二人は顔を見合わせ、ニヤリとした。
 夏の日陰にスイカのスライスが運ばれてくると助かる・・という暑い暑い夏の馬鹿げたお話だ。^^

                                


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