物が傷(いた)んだとき、なんとかしよう! と意気込んでも、手の施(ほどこ)しようがなかったり、その対応がまったく分からなかった場合を[お手上げ]と人は言う。別に手を上げず、下げていたとしても、それはお手上げなのである。^^
最近の電気機器は個人で修理しにくい専門部品、特に電子部品を多量に使っているから、[お手上げ]となり易(やす)い。こんな場合は専門家の情報を得ることで、対応や買い替えがスムースに進めば、助かる。[お手上げ]は困るが、いいことがあったときに思わず万歳(ばんざい)する[お手上げ]は全然、困らない。^^
とある大衆食堂である。冷蔵庫のコンプレッサーが損傷して冷えなくなり、どうしようもなくなった下手(したて)は、なんとか、[お手上げ]の状態から抜け出そうと、近くの馴染(なじ)みにしている大衆食堂へと出かけた。暑い最中(さなか)のこともあり、新しい冷蔵庫が来るまで食品の買い置きが出来なくなったためである。
「おやっ! 下手さんじゃないですか。これはお珍しい~! 長い間、お見限りでしたから、どこかお悪いじゃないかと家(うち)のヤツと言ってたんですよっ!」
「ははは…そんなことはないんですが、仕事の関係で…」
「そうそう!! この前の新聞、見ましたよっ! すごいですねぇ~! リゲル新人賞と植木賞でしたか? ここいらの者(もん)は鼻高々ですよっ! で、今日は、どうなすったんですっ?」
「いやなに…。[お手上げ]になったもんでね」
「? [お手上げ]? よく分からねぇ~や?」
「ははは…親父さんには分からんでしょう。コレがコレになった訳ですよっ!」
下手はジェスチャーで、コトの仔細(しさい)を説明しようとした。
「…ええ。…食えなくなったから…[お手上げ]で来なすったとっ?」
「ああ、まあ、そうです。実は、冷蔵庫が傷みましてね…」
「ははは…そりゃ、まったく[お手上げ]だわっ!」
「手を上げてちゃ、モノが書けませんっ!」
「上手(うま)いっ!!」
「ははは…そう言って下さると助かります」
助かるのは、[お手上げ]になった場合、どういう訳か上手いダジャレが浮かぶことのようだ。^^
完