いよいよ、この短編集もラストとなり、後(あと)がなくなった。後がないと人はどういう心境に至るのか? その辺(あた)りを描くのも面白いのではないか? と思え、百話の四方山話(よもやまばなし)とした次第だ。ラストを飾るお話になるかは別として、最後までお読み下さい。^^
一人の男が渋面(しぶづら)で断崖絶壁に立っている。後がない状況だ。前方には銃を構えた男がニヒルに嗤(わら)う。
「はいっ! O~K~~!!」
後方で見つめる監督の声が飛ぶ。シーン35カット4が撮り終えられたところだ。バタバタとスタッフが折り畳(たた)み椅子(いす)をキャストの二人の前まで運ぶ。
「次まで二十分開けるから、みんな、休んでぇ~~っ!!」
監督が助監[助監督]に耳打ちし、助監が大声を発す。しばしの休憩だ。監督が立ってキャストに近づく。
「いやぁ~、フラついたら…と、冷や汗ものですよっ! 僕、ダメなんですっ、高いとこっ!!」
キャストの断崖絶壁に立った男が折り畳み椅子に座り、マグカップのコーヒーを啜(すす)りながら笑う。
「大丈夫、大丈夫っ!」
監督もコーヒーを啜りながら、笑顔で返す。笑顔とは裏腹に、監督の心境は、『これがヒットしなけりゃ…』と、後がない心境だ。こうしてロケの撮影は続いていくのでありました。^^
後がない状況には、いろいろなパターンがある・・という後がないラストの四方山話でした。^^
完