水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

四方山(よもやま)ユーモア短編集 (100)後(あと)がない

2021年12月06日 00時00分00秒 | #小説

 いよいよ、この短編集もラストとなり、後(あと)がなくなった。後がないと人はどういう心境に至るのか? その辺(あた)りを描くのも面白いのではないか? と思え、百話の四方山話(よもやまばなし)とした次第だ。ラストを飾るお話になるかは別として、最後までお読み下さい。^^
 一人の男が渋面(しぶづら)で断崖絶壁に立っている。後がない状況だ。前方には銃を構えた男がニヒルに嗤(わら)う。
「はいっ! O~K~~!!」
 後方で見つめる監督の声が飛ぶ。シーン35カット4が撮り終えられたところだ。バタバタとスタッフが折り畳(たた)み椅子(いす)をキャストの二人の前まで運ぶ。
「次まで二十分開けるから、みんな、休んでぇ~~っ!!」
 監督が助監[助監督]に耳打ちし、助監が大声を発す。しばしの休憩だ。監督が立ってキャストに近づく。
「いやぁ~、フラついたら…と、冷や汗ものですよっ! 僕、ダメなんですっ、高いとこっ!!」
 キャストの断崖絶壁に立った男が折り畳み椅子に座り、マグカップのコーヒーを啜(すす)りながら笑う。
「大丈夫、大丈夫っ!」
 監督もコーヒーを啜りながら、笑顔で返す。笑顔とは裏腹に、監督の心境は、『これがヒットしなけりゃ…』と、後がない心境だ。こうしてロケの撮影は続いていくのでありました。^^
 後がない状況には、いろいろなパターンがある・・という後がないラストの四方山話でした。^^

                   完


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