水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (2)お悔(くや)み

2021年12月08日 00時00分00秒 | #小説

 お悔(くや)みを言う場合は確認が必要である。当人が死んでもいないのに勝手に殺してはいけないだろう。^^ 明るく生きておられる方を殺しては、世の中が暗くなる・・というものである。
 とある町の喫茶店である。二人の男がコーヒーを飲みながら話をしている。
「コロナで死んだそうだよ、お隣りの爺さんっ!」
「お隣の爺さんって、豚川(ぶたかわ)さんかいっ!?」
「そう! 豚川さんっ!」
「妙だなぁ~。豚川さんなら昨日(きのう)、映画館で見たよ?」
「ええっ!? これからお悔やみに行こうと思ってたんだが…」
「昨日の今日だっ! まあ、急死ってことも、あるにはあるが…」
 その二日後である。
「おいっ! お悔やみに行かなくてよかったよっ! お亡くなりになったのは、反対隣の蓋革(ふたかわ)さんだったよっ!」
「ふぅ~~ん、そうなのか…」
 話した男は軽く流した。
 お悔やみは間違えば先々の明暗を分けるから、十分に確認してからにしましょう。^^

                   完


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