水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (11)空(そら)

2021年12月17日 00時00分00秒 | #小説

 つい今し方まで明るい空(そら)だったものが、急に現れた雲によって全天、薄墨色に覆(おお)われて暗くなる・・ということがある。天候は自然現象だから人には変えられず、どうしようもない。明るい青空の方が暗い曇り空より気分がいいはずだが、中には、暗い空の方が気分が落ち着く・・と言われる根暗(ねくら)なお方もおられるに違いないが…。^^
 とある研究所である。二人の所員が何やら話し合っている。
「どうなんですか所長、雲行きはっ!?」
「んっ!? ああ、予報は昼から下り坂、とかなんとか言っとったぞっ!」
 所長が明るい声で言った。
「その雲行きじゃなく、これですよっ!」
 所員は手に持った試験管を示しながら暗い声で返した。
「ソレか? …ソレはソレだけのもんだよ。次はどうなるか? だが、私には分からんっ!」
 ヤケっぽい少し暗い声で所長は所員に言った。
「必ずコレで晴れるって訳じゃないんですかっ!?」
「ああ、ウイルスはコレにより、さらに強くなる。だとすれば、次は…」
 所長の声は、トーン・ダウンして、やや暗くなった。
「分かりませんよねっ!?」
 所員は暗い声で言った。
「ああ、空のようにな…」
 空のように、今後の私達の暮らしが明るくなるか? 暗くなるか? は、天のみぞ知る・・といったところだろう。明るくなって欲しいものである。^^

                   完


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