水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (16)遠回(とおまわ)し

2021年12月22日 00時00分00秒 | #小説

 出来事を、やんわりと遠回(とおまわ)しに処理すれば、暗くなる結果を明るく終息させることができる。私はこれを、やんわり効果と呼んで時折り活用している。それは恰(あたか)もやんわりと揉(も)み解(ほぐ)して、肩の凝りを取るようなものだ。^^
 とある家庭の一コマである。
 いつものように夫婦の口喧嘩(くちげんか)が始まった。それは毎度のことで、コレといって荒れるほどでもなくいつの間にか終わっている・・という程度の口喧嘩である。その様子をテレビを観ながら遠目で窺(うかが)っていた小学一年生坊主が、『またか…』と、呆(あき)れながら、居間の座布団から立ち上がった。
「母ちゃん、もう夕方だよ…」
 やんわりと遠回しに夕飯準備の必要性を指摘したのである。この言い方にも方法があって、明るく言うのが口喧嘩を終わらせる秘訣(ひけつ)になっていた。暗いと、『分かってるわよっ!』と逆効果で、切れられる恐れがあった。遠回しに明るく、やんわりと言えば、『あっ! そうね…』くらいの軽いテンポで返され、口喧嘩が中断するのが毎度のことだった。ということで、今回もその手法を使ったのである。
 このように、遠回しの効果は潤滑油のような作用を果たし、暗く荒ぶる出来事を、明るく終息させる効果があるのである。^^

                   完


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