水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (14)言葉

2021年12月20日 00時00分00秒 | #小説

 言葉は怖(こわ)い。どう怖いのか? といえば、遣(つか)い方によって、相手の態度を変化させる力を秘めているからである。例えば、「アレ、買ってこいっ!」と強面(こわもて)で言うのと、「アレ、買ってきてくれるかな…」と笑顔で言うのとでは、相手が受ける気分の明暗は大きく変わることになる。もう一つ例を挙げれば、「こらっ! 何度も何度もヘッドライトを点(つ)けたり消したりパッシングしやがってっ!」と車のフロントガラスを叩(たた)かれ喧嘩(けんか)を売られた場合、「すみません…」と謝(あやま)るのと、「なにっ! 信号変ってんじゃねぇ~かっ! 警察沙汰だぜっ!」と逆切れするのとでは、その後の展開の明暗に大きな差異を生じるに違いない。このように言葉は誤解を招きやすく、言霊(ことだま)とも言われる所以(ゆえん)である。序(ついで)ながら、某グループの歌う♪愛の言霊♪は、私の好きな明るい気分になれる一曲だ。^^
 とある家庭である。おじいさんが入れ歯を外(はず)したのはいいが、どこへ置いたのかを忘れてしまい、フガフガと小言(こごと)を垂れるが、いつもの効果がない。
「えっ! なんですっ! おじいさんっ!!」
「フガガ、フガフガ、フカガガ、フガフガガ…」
「フガガですかっ!?」
 おばあさんが分からないから、暗く訊(たず)ねる。
「フガガ、フガガ!!」
 おじいさんは、そうだ、そうだ!! と明るく言う。
「違うんですかっ! なら、なんなんですっ!!」
 おばあさんは分からないから、益々、暗く言う。
 まあ、言葉とはこんな感じで、人の気分を暗くも明るくもさせる困った存在なのである。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする