とにかく"#$%&#が人類を救う究極のベクター[外来遺伝物質を別の細胞に人為的に運ぶために利用されるDNAまたはRNA分子]であることは疑う余地がなかった。蛸山も海老尾も、余りにも予想外の展開が現実に起こっていることに動揺していた。というか、二人とも興奮状態にあったといえる。酒場で飲んでもいないのに、蛸山が茹(ゆだ)ったような美味(うま)そうな赤ら顔で笑う。
「ははは…これで今度こそノーベル賞は私のものだなっ!」
「こんなときに、なに言ってるんですか、所長! 人類が滅亡すれば、ノーベル賞も夢のまた夢なんですよっ!」
「ああ、すまんすまん。そうだった、そうだった…」
海老尾は困った所長に見込まれたものだ…と瞬間、思った。
一方その頃、海老尾の潜在意識で暮らすレンちゃんは老ウイルスとともに、極悪ウイルス群のアジトをガサ入れしていた。
『抵抗しても無駄だっ! 君たちは完全に包囲されているっ! 速(すみ)やかに出てくれば、命の保証はするっ!』
老ウイルスの配下が極悪ウイルスのアジトを完全に包囲し、虫の子一匹、出られないように囲っていた。
『こ、これまでです…』
『だな…』
極悪ウイルス群の首領が呟(つぶや)いた。その後、極悪ウイルス群はことごとくアポトシス[自然壊死]を始め、消え去っていった。
『やりましたねっ!!』
『ああ、そのようだね…』
レンちゃんことレンチウイルスと老ウイルスはニンマリと笑う代わりにクルクルと辺りを旋回した[ウイルスは笑えません ^^]。
続