水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFユーモア医学小説 ウイルス [98]

2023年04月20日 00時00分00秒 | #小説

「ところでさぁ~、こんなことは言いたくないんだけど、そろそろ終わりにしないかっ!?」
 夢の中でも主語抜きのいつもの海老尾の癖(くせ)が出た。
『…何を、です?』
 所長の蛸山と同じような口調でレンちゃんが訊(たず)ねた[微細なウイルスには当然、口などないのですが、飽くまでも夢の中での会話ですから、ある訳です^^]。
「何をって、この話をさっ!」
『この話って、ユーモア科学小説ウイルスを、ですかっ!?』
「ああ、そうだ…」
『そんなことは僕の一存では決められません。書いておられる作者の方に(き)いて下さい』
「君がこの小説の主役だから訊いたんだけど、君だけじゃダメなんだね…」
『というか、僕には決める資格とか権利がありませんから…』
「つまり、君にはこの先がどうなっていくかは分からない・・ってことになるけど…」
『そのとおりです。僕には、この先の筋書き[プロット]がどうなっていくのかが分かりません…』
「要するに作者自身の発想の問題だと、君は、こう言うんだね?」
『ええ、そのとおりです。ウイルスの僕にもこの先がどうなるかは…。海老尾さん、あなた方人類の文明に対する考え方次第なんじゃないですか?』 
「それは、そうなんだけどさ…。こうしたらいいとか、ああしたらいいとか、僕達に対するアドバイスはないのかい?」
『そりゃ~ありますよ。決まってるじゃありませんか。七十年ほど前に文明を戻(もど)してもう一度、やり直せば、僕達ウイルス全体が味方につくかも知れませんよ』
「七十年前・・といゃ~敗戦直後だな…」
『そうなります。共生は作者の思っておられることなんですが…』
「作者の気持が君、よく分かるね?」
『そりゃ~分かりますよ。私は作者の創作した作品の中のウイルスですからっ!』
「なるほど…。ということは、私の考えてることも作者は?」
『もちろんですっ! 作者が海老尾さんを作られたんですから…』
 レンちゃんは断言した。どうも、作者である私自身が、この話の結末の鍵を握っているようなのである。しかし、今の段階では、作者の私にもどうなっていくのか? という先行きが、ウイルスの終息時期のように不透明だった。

                   続


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