水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

SFユーモア医学小説 ウイルス [82]

2023年04月04日 00時00分00秒 | #小説

「以前…といっても、かなり前の変異ウイルスだが、コミクロン株というのがあったろっ?」
「ああ。そういや、元号が変わって三年目ぐらいに登場した新顔がありましたね」
「そう!! 今回の極悪ウイルスは、そのニューフェイスの兄弟の息子の三代ほどあとの親戚らしい…」
「…ややこしいんですね。要するにコミクロン株の甥の三代先の親戚なんですねっ!?」
「んっ? …ああ、まあそんなところだろう」
「それにしてもコミクロン株にすりゃ、遠い親戚とはいえ極悪なのが出て、世間体(せけんてい)じゃなかった、ウイルス体(てい)が悪いでしょうねっ!」
「そりゃまあ、そうだろうな。私らだって身内に一人でもそんなのがいたら、親戚全体が迷惑を被(こうむ)るからね」
「ですよね…」
「そんなこたぁ~この際、どうでもいいから、一刻も早く完璧に治癒する薬剤を完成させんとな…」
「そうでしたっ! また三日三晩ですね…」
「三日三晩で完成すりゃいいが、十日以上は覚悟せにゃならんだろう…」
「十日以上ですか…」
「それで済みゃ~まだいい方だが…」
「出来なけりゃどうなるんです、所長!?」
「君は、それを私に言わせるつもりかっ!?」
「どうも、すいません…」
「いや、謝らんでもいいが、それが現実だよ、海老尾君…」
「所長! そんな弱気なことでどうするんですっ! 人類の明日が僕らにかかってんですよっ!」
「そんなこたぁ~分かってるよっ!!」
 二人は思わぬところで衝突し、沈黙した。

                   続


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