そうこうして数日が経ったとき、研究所へテレビ局の社員が訪れた。
「蛸山所長さんでしょうか?」
「はい、そうですが…」
蛸山は、ひょっとするとひょっとするぞ…という期待感を抱きながら、態度は素知らぬ態(てい)で肯定した。
「私、〇▽テレビの烏賊田(いかだ)と申します」
烏賊田は自己紹介をしながら名刺を手渡した。名刺には、[〇▽テレビ チーフ・プロデュサー 烏賊田釣男]と書かれていた。
「はあ、そうですか…。で、なにか御用で?」
「実は、来週の水曜日なんですが…」
「はあ…」
「報道番組の[時の人]って番組、ご存じでしょうか?」
「[時の人]ですか? ええ、時々、観ておりますが…」
「この番組にご出演願えないでしょうか?」
「来週の水曜ですか? 何時からです?」
「午後二時なんですが…」
「海老尾君っ! どうだねっ!?」
「空いてます、所長っ!」
海老尾は、いつだって空いてるじゃないですか…と思いながら少し離れたところから返した。
「ははは…だ、そうです」
「それじゃ、OKってことで、よろしいんでしょうか?」
「ああ、喜んで…」
「それじゃ、昼一時に車でお迎えに上がりますから、よろしくお願い致します」
続