「ああ、分かりましたっ!」
蛸山は隠しきれず、喜色満面に応諾した。
〇▽テレビの局員、烏賊田(いかだ)が帰ったあと、蛸山と海老尾は賑(にぎ)やかに喜びながら握手した。
「先生、やりましたねっ!!」
「いやいや、テレビに出てくれってだけの話だからさ…」
蛸山は、暗にノーベル賞決定じゃないんだから…と、言いたげに謙遜した。
「なに言ってるんですかっ! テレビの局がオファー[出演依頼]に来るってことは、決定ってことですよっ!」
「そうかな? だと、嬉(うれ)しいんだが…」
蛸山は、決定は疑う余地がない…と思いながら、余り期待していないように弱く言った。
「間違いないですよっ?、いうことは、僕はどうなるんです?」
「決まってるじゃないかっ! 君は僕の片腕なんだから、私と同じだよ」
「そうでしょうか?」
海老尾は、当たり前だろっ! とは思ったが、その気分を隠すように訊(たず)ねた。
「ああ、この研究は二人の成果なんだからさ」
「ですかね…」
海老尾は、って言うか、僕の発見なんでね…という気持を隠して返した。
「そうとも…」
蛸山は、君はどうでもいいんだが…と、海老尾を煙たく思いながら、その気分を隠して答えた。
「あとは、受賞決定を待つだけですね」
「ああ、だといいが…」
蛸山は、そうそう! という気分を隠して言った。
「間違いないですよっ!」
海老尾は待ってるくせに…という気分を隠し、ヨイショした。
続