水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

困ったユーモア短編集-30- 軽はずみ

2017年05月10日 00時00分00秒 | #小説

 思いつくまま深く考えもせず物事を何げなくやった結果、思いもよらぬ困った事態に立ち至ることがある。人は、それを軽はずみと言い、お小言(こごと)を漏らして愚痴ることになる。
 朝からゴチャゴチャとパソコンを弄(いじ)くっていた小松は、とうとうパソコンを怒らせてしまった。要は、フリーズ[凍りついたように動かなくなる状態]させてしまったのである。最初のうちは軽く弄くっていた小松だったが、「ウン!」とも「スン!」とも言わず、画面も消えて黒くなったパソコンを前に焦(あせ)りだした。そして20分後、顔つきは必死の形相(ぎょうそう)へと変化した。
「何してるの? もう朝ごはんよ?」
 キッチンから現れた妻の直美は、そんな小松を遠くから窺(うかが)い、訝(いぶか)しげに声をかけた。
「んっ? ああ…。今、いくよ」
 そして、また15分ばかりが過ぎた。
「今、いくって、全然こないじゃないっ! 先に食べるわよっ!! 私、今日、出かけるんだからっ!」
 膨(ふく)れっ面(つら)の直美がキッチンからまた現れて愚痴った。この声を聞きながら、俺としたことが軽はずみだった…と小松は後悔した。
「ああ、食べて…」
 心、ここにない小松は、パソコンのキーをああでもない・・こうでもない・・と叩(たた)きながら、感情のない言葉を返した。
 それから数日後、そのパソコンがどうなったか? は読者のご想像にお任せしたい。^^ 軽はずみは保険を付けないと危険をともなうのである。

                             完


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 困ったユーモア短編集-29... | トップ | 困ったユーモア短編集-31... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事