水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (47)おぼつかない

2022年01月22日 00時00分00秒 | #小説

 おぼつかない・・とは、不安定この上ない状況や状態である。それを安定させ、明るいおぼつく状況や状態へと変化させるためには、一に努力、二に努力、三、四がなくて五に努力! が求められる。^^ まあ、三も四もあった方がいい訳だが…。^^
 個人の技量の優劣によってその後の状況や状態に、おぼつく、おぼつかない差が生じるのは仕方がない事実だろう。しかし、おぼつかないよりは、おぼつく状況や状態の方が、気分は安心感に満ち溢(あふ)れて明るいだろうし、暗くならないはずである。^^
 一人の男が庭先で粘土を捏(こ)ねながら焼き物作りに汗している。通りすがりの近所の二人が垣根越しにその光景を眺(なが)めて話をしている。
「おいっ! あの人、懲(こ)りもせずに、また作ってるぜっ!」
「ああ、相変わらず手つきも、おぼつかないっ!」
「いやいや! そうじゃないっ! 手つきは、おぼつかなくていいんだ。問題はココッ!」
 通りすがりの片方が、手首で胸を何度か軽く叩(たた)いた。
「ココッ! って、心かっ!」
「そう、ココッ! 作り手の心次第っ! 作り手の心が、おぼつかないと、作られた焼き物も、おぼつかなくなるってことさっ!」
「作り手には作る責任があるってことだな!?」
「まあ、そういうことになる…。おぼつかない作り手が作った焼き物は、作られるほど、おぼつかない焼き物で溢れる・・って寸法さっ!」
「おぼつく人が作らないと、世の中がおぼつかなくなる訳だ…」
「そうっ! まず、君じゃダメってことさっ!」
「あんたはっ!?」
「俺かっ!? ははは…俺もダメだろうなっ!」
 二人が笑いながら歩き去ったとき、庭でショボい声がした。
「ああっ!! コレもダメだっ!」
 おぼつかない状況や状態を、おぼつくようにするのは難しい訳である。^^

                   完


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