水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -38- 貨幣

2024年12月29日 00時00分00秒 | #小説

 最近の世相は貨幣を預けるにも手数料がかかる時代となっている。実に嘆かわしい世相だが、こればかりは、そう致しました…と、金融機関に告げられれば手の打ちようがなく、小市民にはどうしようもない。^^
 少額貨幣が貯まった禿川(はげかわ)は、とある金融機関の窓口で預けようとしていた。
「あの…この枚数ですと手数料がかかるのですが…」
「えっ! そうなの? 前はいらなかったんだけど…」
「前は前、今は今ですから…」
「それはまあ…」
 窓口の係員にそうにべもなく言われ、禿川は返す言葉がなく撤収することをを余儀なくされた。
「どうも、申し訳ありません…」
「あなたに謝られても…。そういう決めになったんなら仕方がないです。他を当たってみます…」
「おそらく、どの金融機関へ行かれても同じかとは存じますが…」
 大きなお世話だ…とは思えたが、そうとも言えず、禿川は窓口係員に軽くお辞儀をすると、その金融機関を去った。
『バーチャル貨幣の時代か…』
 カードや電子マネー決済に変化しつつある世相に禿川は少し嫌気がさした。
 確かに禿川さんが思われるようなバーチャルな世相になりつつありますね。昔人間としては悲しい現実です。ぅぅぅ…。^^

                   完


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