「いえ…なにか?」
『昨日、言い忘れていたのですが、電話は次元に関係なく、いつでも通じます。それを言い忘れたもので…』
「はあ、態々(わざわざ)…」
戸倉はそう返していた。
『いつ、あなたの前へ現れられるか、それは私にも分かりませんが、また現れます。では…』
「あっ! ちょっと待って下さい! いつ現れるか分からないとおっしゃいましたが、それは不便です。なんか法則めいたものがあるはずです。俺も探しますが、それをあなたも探して下さい。分かれば、便利ですし、お互いの生きる世界にプラスになるんじゃないか・・と思えますので」
『ああ、それはそうですね。私も探してみます。それに、なぜ、あなたの前に突然、現れることになったのかも』
「そうですよね。このままじゃお互い、気分がモヤモヤしますよね」
『ええ。では、何か分かれば連絡します』
「出来れば、夜の方が助かるんですが。俺も仕事をしてますんで…」
『分かりました。では…』
携帯は切れた。戸倉の眠気は、すでに失せていた。ベッドを離れた戸倉は洗顔→食事→事務所掃除→着替え→伝票整理、用具点検と、いつものように朝の諸事を熟(こな)していった。
「はい! 庭の芝を…。あの、どれくらいの広さでございしょう? …はい! ああ、それくらいでしたら、数時間もあれば、お近くでございますし、宜しければ、これから参上いたしますが…」
事務所の椅子に座って小一時間が過ぎたとき、携帯がかかった。今日は休もう・・と起きがけは思っていた戸倉だったが、分身からの電話で俄かにやる気が出て仕事を入れていた。
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