車を走らせ、依頼先の芝を刈り終えたとき、すでに昼前だった。殊(こと)の外(ほか)、作業は順調に捗(はかど)り、戸倉が予想していたより2時間ばかりも早く終了した。今日は半ドンにしようと戸倉は思った。今日は休もう・・と最初は思っていたのだから、昼まででも働けば御の字だった。依頼先に半日料金の五千円をもらい、戸倉は領収書を手渡して帰宅した。幸い仕事中の異常事態は起こらなかったから、戸倉はホッとしていた。戸倉は弁当屋で買った弁当をレンジで温め、遅めの昼食を済ませた。湯呑(ゆの)みのお茶を飲み、ふぅ~っとひと息ついたとき、戸倉は左の肩を突然、叩(たた)かれた。昨日のことがあったから、驚きの程度は、さほどでもなかったが、それでもギクッ! と戸倉はした。
『私です! 驚かせて、すみません』
戸倉は思わず振り返った。
「ああ、昨日の…。何か分かりましたか?」
『それなんですがね。ひとつ耳寄りな情報がアチラで入手できました』
「と、いいますと?」
『いやぁ~、それを聞いたときは私も驚きましたよ。といいますのは、他にも仲間がいたんです。まあ、仲間と言うのは妙なんですが、私と同じようにこの世界へ現れてる者が数人、いたんですよ』
「よく分かりましたね」
『あなた、人材派遣の仕事をなさってますよね。もちろん私も昨日のあなたですから同業種なんですが、向こうでは事務所を構えて数人、店員を雇ってるんです。先ほど申しましたコチラへ現れてる者が数人いたといいますのは、実は彼らなんです』
「ほう、それは…」
戸倉は聞く人になった。
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