水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -91- ジリ貧

2025年02月20日 00時00分00秒 | #小説

 どうも世相はジリ貧傾向が大きいように思える…と、福崎は感じていた。そう彼が感じるようになったのは、スーパーで買物をする人々の姿が以前に比べて貧相になった…と思ったのが最初だった。それは人に限らず、レジ袋の有料化、人件費削減のセルフレジ化、トイレットぺーパーの巻き幅の減少、カップ麺の蓋の簡素化、袋入りチョコレートの個数減少etc.多くの変化が影響していた。
『この国の経済もジリ貧だな…』
 福崎はポツンとそう思った。国際経済力がドイツに抜かれて世界第四位に低落したこともその思いを大きくしていた。福崎は原因を考えた。政治家が悪いのか? そう思いながら福崎は周囲に広がる景観に目をやった。春には菜種の黄色い花が咲き、小麦が勢い良く伸び始め、休耕地でも蓮華の花が咲き乱れていた田畑が今や雑草地帯となり果てていた。二毛作が一毛作になり、かろうじて米だけは収穫されてはいたが、昭和三十年代の勢いはなかった。田畑の向こうの道路には人の姿がなく、車ばかりが動いていた。
『やはり、全体的にジリ貧か…』
 そう思うと、春だというのに福崎の心は萎(しぼ)んだ。
 福崎さん、まだこれからです。諦めずに、今後の政治に期待をしましょう。と、疑心暗鬼ながらも一応、慰めさせて頂きます。^^

                   完


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