幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第九十六回
昼前、上山は仕事に託(かこつ)けてパソコンでアフリカ情勢以外の紛争国を探していた。アフリカ以外となると、イラン、イラク、アフガニスタンなどの中東アジアである。そのつもりでパソコンを検索していた上山は、つい思わずアフリカを検索してしまった。すると、アルジェリア、ルワンダ、コンゴ、シエラレオネなど、内戦状態が続く国々が多数、見つかったのだ。これには、上山も参った。幽霊平林にシリア、ソマリア以外の紛争国を探してくれ、と勝手なことを云ったが、こりゃ念じる規模を考えにゃいかんな…と思えていたのである。
「君さぁ~、さっき思ったんだけど、念じる規模さ。いつやらも云った思うけど、有効範囲っていうの? それさ、最大限、マックスで念じてみちゃくんないかな」
屋上へ昇った上山は、開口一番、プカリプカリと漂う幽霊平林を見上げて、そう云った。
『あっ! 課長。来られましたか。いやあ、やってくれと云われりゃ、マックスで念じますがね。まあ、その有効性のは分かりませんが…』
「有効性か…。早い話、効果がすべてに及ぶとは云えないんだな」
『はい、そういうことです申し訳ないのですが…』
「いや、なにも君が謝ることはない。まあ、やってみてくれ」
『はい! …それより、ギリシャの国家破綻に近い経済危機のニュースがありましたよ。ご存知ですか?』
「ははは…、そんなこたぁ知ってるよ。ユーロを抜けるとか、援助を受ける受けないとか、だろ?」
『さすが、課長! よく、ご存知です』
「私の持論は、いつやらも云ったと思うが、一定のスパンで通貨レートを見直す変動固定相場制だが、世界金融の安定は、これ以外にないと考えてるんだ。ギリシャ問題も、この辺りの問題に起因してるんじゃ・・と思う。だいいち、ヘッジファンドとかのつけ入る隙(すき)がないだろ? 世界金融で儲けようなんて、許せんよ、君! 念じてくれ!!」
『ははは…、今日の課長、偉く興奮されてますね。この話は初耳です』
「これが、興奮せずに、いられるかっ!」
上山は語気を荒げた。
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