世相が陰気だと人々が暗くなる…と、会計課課長補佐の篠塚は思わなくてもいいのに思った。^^ そして、どうすれば陰気が陽気に変化するのか? と、考えなくてもいいのに、また考えた。^^ そのとき、チャイムが勢いよく響き、昼になったことを告げた。
とある町役場である。
「篠さん、昼、出ましょうか?」
係長の藤山が、それとなくいつものように篠塚を窺(うかが)った。篠塚は無言で頷くと席を立った。陰気とも陽気とも言えないこの単調な繰り返しが二人の間に続いていた。ただ三月は少し状況が異なり、春の人事異動の内示がなかったからか、二人の間には少しホッ! とした安堵感があった。そうなると、いつものパターンながらも気分は自然と陽気になる。篠塚と藤山はそれで済んだが、二人の席から少し離れた野崎は廃棄物対策課への異動が内示され、バタバタと浮足立っていた。
「お先…」
篠塚が声をかけ、藤山は無言で小さく笑っ野崎の前を通り過ぎた。
「ああ、どうも…」
野崎は虚ろな眼差しで陰気に返した。
このように、官庁の春の人事異動は陰気、陽気を心理面で左右させるのです。^^ ようやく馴染んだ部署なのに数年で異動する慣例的な世相も陰気要因の一つに思えるのですが…。^^
完