ウェティコ 神の目を見よ
トム・ハートマン 著
大内 博 訳
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(1)世界の人口
西暦1000年 5千万人
西暦1800年 10億人 石油発見
西暦1930年 20億人
西暦1960年 30億人
西暦1974年 40億人
西暦1987年 50億人
(2)はじまり
4万年前 革命がおこる
(これまで) 食糧供給源は、周囲に自然に存在していた植物や動物
(革命後) ・牧畜や動物の家畜化と農業
↓
・金属の精錬
↓
・石炭、石油
(3)『ウェティコ』とは
ウェティコとは、ネイティブアメリカンの言葉で「人喰い」を意味する。
10万年にわたってスピリチュアルで豊かな部族生活を営んできた人類は、
約7千万年前に自然界と他部族の支配に手を染めた。
以降、人類の歴史は、神の名のもとに、あるいは自民族のために、
他者の殺戮と富の」略奪、自然破壊を繰り返してきた。
これはまさしく、著者のいう『ウェティコ』であり、
ウェティコたちの文明衝突は、今なお続いている。
(4)カヤポ族のたどった道
①シュメール文明以前に、カヤポ族は、ブラジルのほぼ全域に及ぶ文化を保有していた。
② 彼らの間では骨の変形性疾患は少なく、高い身長と頑健な身体を持ち、寿命も長かった。
彼らは、また、今日まで生き残っている複雑な言語を持っており、古代より続いている
口伝えに保たれてきた歴史や、様々な伝統と宗教を持っていた。
そして、ブラジル全土に最高で4千万人の住民から成る集落を点在させていた。
これらの町は土で築いた巨大な丘の上に造られ、自然の驚異から人々を守っていた。
さらに、水路を作って灌漑と商業活動のために役立てていた。
彼らは家族を持ち、結婚し、子供の面倒を見、宗教活動も行い、
戦争という概念をまったく知らなかった。彼らにも部族間の争いがあったことは事実であるが、
そうした争いが他部族を絶滅させたりすることは決してなかった。私たちが7千年にわたって
行ってきた民族虐殺という概念は彼らには無縁であった。
③カヤポ族の人々、および彼らと同じような生き方をしてきた人々は、
何十万年もの間、持続可能な形で生き残り、豊かな生活の質を確保するだけでなく、
限りなく未来にまで及ぶ世代の生存や生活の質をも保証できるようなやり方で、
文化を営んできた。
④16世紀にスペイン人のピサロがやってきた。
その結果、百年のうちに、南アメリカの原住民の85%以上の人々が死亡した。
主な原因は伝染病だった。
生き残ったカヤポ族の人々は、ブラジルのジャングルの奥深くへと非難し、
400年にわたって森に優しい方法で農業を継続した。
⑤そこへ、20世紀前半に森林を伐採する材木業者や牧場主がやってきた。
森林は伐採され、傷ついた土地は牛を放牧する牧草地に適したものになった。
⑥牧場主や材木業者は、カヤポ族やその他の部族を皆殺しにするために、
殺し屋を雇い、二つの耳や頭皮と引換えに金を払った。禁止されたのは最近のこと。
⑦禁止された主な理由は、カヤポ族を搾取する別な方法が発見されたから。
あるグローバルな化粧品会社は、カヤポ族を雇ってジャングルで堅果実をとらせ、
化粧品にそれを使用した。
これは、カヤポ族の人にわずかの現金収入をもたらし、化粧品会社に何千万ドルの利益をもたらした。
この化粧品会社は、カヤポ族酋長の写真を宣伝に使用した。
(酋長は写真使用に反対であったにも実行されたようで、最近、彼が原告となって訴訟が起こされた。)
⑧カヤポ族が現金収入を得たことで、彼らは『ウェティコ文化の病』に侵されることになった。
部族の一部の人はこれまでの伝統的な農法を捨てて、現金収入をもたらす焼き畑式の農耕を始めた。
こうして、これまで様々な原住民がそうやってきたように、カヤポ族の人々も「進歩」に屈した。
⑨今では、多くのカヤポ族の人々が、法人組織の農場や工場で働いている。
搾取されていた人々は、今や、搾取する人になった。
⑩カヤポ文化は急速に崩壊しつつあり、それに伴って熱帯雨林も崩壊しつつある。
(5)『神の目』
「神の目をどうすれば見ることができるか知りたいか?」
「自分以外の生き物なら何でもいいから、その目を覗き込んでみればいい。
猫の目、犬の目、蠅の目、魚の目、友達の目、敵の目、すべての目の中に神がいる」
(6)訳者あとがき(+追加)
私たちが文明だと信じてきたものは、実はウェティコ(人喰い)文化だった。
一例をあげると、ギリシャ文明などは人間の歴史の中で燦然と輝く金字塔の一つだと思っていた。
しかし、ギリシャ文明の最盛期にギリシャ市民の3人に1人は奴隷であったという事実がある。
過去7千年の地球の文明は弱肉強食を基盤とする文明だったともいえるのではないだろうか。
しかし、ウェティコ文化よりも古い文化があったと著者は指摘する。
それは成熟した文化であって、ウェティコの世界観とは対照的に、共存を旨とする文化である。
かつては地球上いたるところに存在したそのような部族は、今では地球に散在する程度になった。
現代文明は、競争を原理としてあらゆるものを喰いつくしてきたうえに、
更に、競争で、持続可能な世界を模索している。
一方、まさに消え行く『成熟な文化』は、持続可能な文化であった。
トム・ハートマン 著
大内 博 訳
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(1)世界の人口
西暦1000年 5千万人
西暦1800年 10億人 石油発見
西暦1930年 20億人
西暦1960年 30億人
西暦1974年 40億人
西暦1987年 50億人
(2)はじまり
4万年前 革命がおこる
(これまで) 食糧供給源は、周囲に自然に存在していた植物や動物
(革命後) ・牧畜や動物の家畜化と農業
↓
・金属の精錬
↓
・石炭、石油
(3)『ウェティコ』とは
ウェティコとは、ネイティブアメリカンの言葉で「人喰い」を意味する。
10万年にわたってスピリチュアルで豊かな部族生活を営んできた人類は、
約7千万年前に自然界と他部族の支配に手を染めた。
以降、人類の歴史は、神の名のもとに、あるいは自民族のために、
他者の殺戮と富の」略奪、自然破壊を繰り返してきた。
これはまさしく、著者のいう『ウェティコ』であり、
ウェティコたちの文明衝突は、今なお続いている。
(4)カヤポ族のたどった道
①シュメール文明以前に、カヤポ族は、ブラジルのほぼ全域に及ぶ文化を保有していた。
② 彼らの間では骨の変形性疾患は少なく、高い身長と頑健な身体を持ち、寿命も長かった。
彼らは、また、今日まで生き残っている複雑な言語を持っており、古代より続いている
口伝えに保たれてきた歴史や、様々な伝統と宗教を持っていた。
そして、ブラジル全土に最高で4千万人の住民から成る集落を点在させていた。
これらの町は土で築いた巨大な丘の上に造られ、自然の驚異から人々を守っていた。
さらに、水路を作って灌漑と商業活動のために役立てていた。
彼らは家族を持ち、結婚し、子供の面倒を見、宗教活動も行い、
戦争という概念をまったく知らなかった。彼らにも部族間の争いがあったことは事実であるが、
そうした争いが他部族を絶滅させたりすることは決してなかった。私たちが7千年にわたって
行ってきた民族虐殺という概念は彼らには無縁であった。
③カヤポ族の人々、および彼らと同じような生き方をしてきた人々は、
何十万年もの間、持続可能な形で生き残り、豊かな生活の質を確保するだけでなく、
限りなく未来にまで及ぶ世代の生存や生活の質をも保証できるようなやり方で、
文化を営んできた。
④16世紀にスペイン人のピサロがやってきた。
その結果、百年のうちに、南アメリカの原住民の85%以上の人々が死亡した。
主な原因は伝染病だった。
生き残ったカヤポ族の人々は、ブラジルのジャングルの奥深くへと非難し、
400年にわたって森に優しい方法で農業を継続した。
⑤そこへ、20世紀前半に森林を伐採する材木業者や牧場主がやってきた。
森林は伐採され、傷ついた土地は牛を放牧する牧草地に適したものになった。
⑥牧場主や材木業者は、カヤポ族やその他の部族を皆殺しにするために、
殺し屋を雇い、二つの耳や頭皮と引換えに金を払った。禁止されたのは最近のこと。
⑦禁止された主な理由は、カヤポ族を搾取する別な方法が発見されたから。
あるグローバルな化粧品会社は、カヤポ族を雇ってジャングルで堅果実をとらせ、
化粧品にそれを使用した。
これは、カヤポ族の人にわずかの現金収入をもたらし、化粧品会社に何千万ドルの利益をもたらした。
この化粧品会社は、カヤポ族酋長の写真を宣伝に使用した。
(酋長は写真使用に反対であったにも実行されたようで、最近、彼が原告となって訴訟が起こされた。)
⑧カヤポ族が現金収入を得たことで、彼らは『ウェティコ文化の病』に侵されることになった。
部族の一部の人はこれまでの伝統的な農法を捨てて、現金収入をもたらす焼き畑式の農耕を始めた。
こうして、これまで様々な原住民がそうやってきたように、カヤポ族の人々も「進歩」に屈した。
⑨今では、多くのカヤポ族の人々が、法人組織の農場や工場で働いている。
搾取されていた人々は、今や、搾取する人になった。
⑩カヤポ文化は急速に崩壊しつつあり、それに伴って熱帯雨林も崩壊しつつある。
(5)『神の目』
「神の目をどうすれば見ることができるか知りたいか?」
「自分以外の生き物なら何でもいいから、その目を覗き込んでみればいい。
猫の目、犬の目、蠅の目、魚の目、友達の目、敵の目、すべての目の中に神がいる」
(6)訳者あとがき(+追加)
私たちが文明だと信じてきたものは、実はウェティコ(人喰い)文化だった。
一例をあげると、ギリシャ文明などは人間の歴史の中で燦然と輝く金字塔の一つだと思っていた。
しかし、ギリシャ文明の最盛期にギリシャ市民の3人に1人は奴隷であったという事実がある。
過去7千年の地球の文明は弱肉強食を基盤とする文明だったともいえるのではないだろうか。
しかし、ウェティコ文化よりも古い文化があったと著者は指摘する。
それは成熟した文化であって、ウェティコの世界観とは対照的に、共存を旨とする文化である。
かつては地球上いたるところに存在したそのような部族は、今では地球に散在する程度になった。
現代文明は、競争を原理としてあらゆるものを喰いつくしてきたうえに、
更に、競争で、持続可能な世界を模索している。
一方、まさに消え行く『成熟な文化』は、持続可能な文化であった。