本日12月21日は、朝廷が源頼朝に対し諸国への守護・地頭の設置・任免を許可した日で、日本とタイの間で日泰同盟が締結された日で、昭和南海地震が発生した日で、第1回コミックマーケットが開催された日で、パンアメリカン航空103便爆破事件があった日で、アルマアタでソビエト連邦を構成する11共和国の首脳による会議が開かれてソビエト連邦の消滅を決議した日で、日本テレビ郵便爆弾事件があった日です。
本日の倉敷は晴れでありましたよ。
最高気温は十度。最低気温はマイナス一度度でありました。
明日も予報では倉敷は晴れとなっております。
狐が知人の家の門を出る時、友人達は桜の樹の所に集まつてゐました。
其れは星祭に青い灯りを拵えて川へ流す烏瓜を取りに行く相談らしかつたのです。
けれども狐は手を大きく振つてとことこと知人の家の門を出ていきました。
藏屋敷が立ち並ぶ町の家々では銀河の祭りにいちゐの葉の珠を吊るしたり檜の枝に灯りをつけたりいろいろ仕度をしてゐました。
家へは帰らず狐が三つ曲つて或る大きな活版処に入つて直ぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白い襯衣を着た人に御辞儀をして靴を脱いで上りますと、突き当りの大きな扉を開けました。
中は電燈が点いて沢山の輪転器がばたりばたりと回転し、布で頭を縛つたりラムプシェードをかけたりした人達が何か歌ふやうに讀んだり數へたりしながらたくさん働いて居りました。
狐は直ぐ入口から三番目の高い卓子に座つた人の所へ行つて御辞儀をしました。
其の人は暫らく棚を探してから「これだけ拾って行けるかね?」と云ひながら一枚の紙切れを渡しました。
狐は其の人の卓子の足元から一つの小さな平たい函を取り出して向ふの電燈のたくさん点いた立てかけてある壁の隅の所へ座り込むと小さなピンセットでまるで粟粒ぐらゐの活字を次から次と拾ひはじめました。
青い胸当をした人が狐の後ろを通りながら「お早う」と云ひますと、近くの四五人の人達が声もたてずこつちも向かずに冷く笑ひました。
狐は何回も眼を拭ひながら活字をだんだん拾いました。
あなろぐな作業であります。でもでじたるな作業でもあります。狐は不思議な気分に陥りました。
狐が拾う活字で組み立てられる文章はとてもエロい文章です。エロエロであります。いやらしい。
そのような文章を組み立てさせるのはセクハラであります。
周囲の者は狐が組み立てる文章がどのやうな文章なのか知つているのでしやう。狐の顔をしきりと見ています。
羞恥プレイであります。狐は屈辱に身を震わせました。セクハラ野郎どもは誅殺すべし。しかしこの作業はお仕事であります。狐は秘儀・卓袱台返しを繰り出すことなく顔を真つ赫にして無言で活字を拾いました。
暫らくたつた頃。
狐は拾つた活字をいつぱい入れた平たい箱をもう一度手に持つた紙切れと引き合わせてからさつきの卓子の人へ持つて来ました。
其の人は黙つて其れを受け取つて微かに頷きました。
狐は御辞儀をすると扉を開けてさつきの計算台の處に来ました。
するとさつきの白服を着た人がやつぱり黙つて小さな木の葉を一枚狐に渡しました。
狐は俄かに顔色が良くなつて威勢良く御辞儀をすると台の下に置いた鞄を持つて表へ飛びだしました。
それから元氣良く口笛を吹きながら麺麭屋さんへ寄つて麺麭の塊を一つと角砂糖を一袋買ひますと一目散に走りだしました。