以下の文は、アゴラ言論プラットフォームの鈴木 邦和氏の『山中教授の指摘する「東京のPCR検査減少」は誤解』と題した記事の転載であります。
山中教授の指摘する「東京のPCR検査減少」は誤解
2020年04月23日 21:00
こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。
ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授が「東京都のPCR検査数が減っている」と指摘されて話題になっています。
山中教授の指摘に世田谷区の保坂区長も同調されています。
昨日の検査件数は、東京都発表で167人→【東京の感染者数は減少?】山中伸弥教授も驚愕「検査件数を見て愕然。感染者数が減少しているように見えるのは、単に検査をしていないだけ」 https://t.co/8UZkZI4CUr 検査件数を見ると愕然とします。検査件数も同じように減っているのです。つまり感染者数が
— 保坂展人 (@hosakanobuto) April 22, 2020
先に結論から申し上げますと、東京都のPCR検査数は実際には減っていない可能性が高いです。
そして、これは山中教授に非があるのではなく、都のPCR検査の集計方法に原因があります。
誤解を招くような形となっており、大変申し訳ありません。
この件は東京都として丁寧にご説明しなければなりません。
以下、始めに山中教授のブログを引用させて頂きます。
日本の中で最も感染者の爆発的増加が心配されるのは首都東京です。
図1は東京都が発表している日ごとの感染者数です。
これを見ると4月7日の緊急事態宣言発令以降、ピークは過ぎたのではないか、やや減少傾向にあるのでは、と考えてしまいます。
しかし、図2の検査件数を見ると愕然とします。
検査件数も同じように減っているのです。
つまり感染者数が横ばいや減少しているように見えるのは、単に検査をしていないからだけなのです。
注目すべきは検査件数に対する陽性者の割合(陽性率)。
東京は検査数が日ごとに大きくぶれているので、一週間ごとの陽性率を計算してみました。
2月は3%、3月になって4%、7%と増加し、3月末には18%に急増、4月は19%を維持しています。
検査件数には、同じ人に複数検査した件数も含まれているという事ですので、実際の陽性率はさらに高いと考えられます。
これは危険領域です。
非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定されます。(後略)
*山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信「東京の感染者数は減少しているのか?」より引用
なぜ減少しているように見えるのか
このような誤解を招いてしまっているのは、ひとえに東京都のPCR検査の集計方法に原因があります。
これは同僚の藤井都議か以前から指摘しているように、東京都のPCR検査には、①保健所を経由して東京都健康安全研究センターが行うものと、②地域のクリニックなどの病院を通じて民間検査会社が行うものの2種類があります。
そして、①保健所を経由して行うPCR検査については、検査実施数と陽性患者数を毎日集計しています。
しかし、②地域のクリニックなどの病院を通じて民間検査会社が行うPCR検査については、陽性患者数は毎日集計しているものの、検査実施数は毎週金曜日の週1回しか集計していません。
表にすると以下のような現状です。
つまり、いま東京都の新型コロナ対策サイトで毎日更新されている検査実施数も、民間検査会社のPCR検査については、4月23日現在でも4月15日分までしかカウントされていません。
ゆえに、4月15日以降は急激に下がっているように見えてしまいます。
都のグラフにはその注釈もついているのですが、非常にわかりにくいです(下図)。
*東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト「都内の最新感染動向」より引用
なぜ民間検査の集計は週1回なのか
ここまで読まれた方々は「なぜ民間検査の集計も毎日行わないのか」疑問に感じると思います。
私も調査してみたのですが、東京都内でPCR検査を行っている民間病院は70ほどあり、各病院の方で集計して東京都に報告しています。
その集計を検査実施数も含めて毎日行うと、ただでさえ厳しい状況にある各病院の負担がさらに重くなるため、東京都としては週1回の報告をお願いしているというのが現状でした。
各病院の負担というのは私も大変懸念するところですが、山中教授が指摘するように、検査総数や陽性率は現在の感染状況をより正確に理解するために重要な指標です。
しかし、感染症法第12条では、陽性患者数については報告義務があるものの、検査総数は法律上の報告義務がありません。
この感染症法も東京都の現状の一因となっています。
そこで、私の方で他府県の事例を調査したところ、大阪府ではPCR検査を行っている民間病院が同じく70ほどあるものの、民間の検査件数も含めて毎日集計・公表していました。
東京都と大阪府では集計の方法が異なり、東京都では各病院が都庁に直接報告して集計しているのに対して、大阪府では保健所が各病院の検査総数を集計して府庁に報告していました。
法律で規定されていない業務については、都道府県でも差があるようです。
本件については、大阪府などの事例を参考にしながら、東京都でも現場の負担が少ない形でなるべく早く集計する方法を、私も提案していきたいと思います。
東京都の陽性率はどうなのか
検査総数については4月15日までの集計になりますが、先ほど山中教授がお示ししていた4月の陽性率を4月15日時点までで計算すると約16%になります。
この時点では3月の18%よりも低いですが、いまだ予断を許さない状況であることは変わりません。
一方で、東京都内の今週の新規陽性患者数は、前週と比較してわずかに減少しています。
仮に明日更新される直近1週間の検査総数が前週と変わらない水準であるならば、あくまでも検査の範囲内では、患者の増加率と陽性率もわずかに減少していると云えます。
明日以降の東京都の公表データを注視したいと思います。
感染症との戦いにおいて、正確なデータの把握は極めて重要です。
現在、東京都医師会が中心となってPCR検査センターの設立を進めているのに加え、出口戦略の鍵となる抗体検査についても国の方で議論が進んでいます。
東京都としてもこうした動きに連動して、迅速かつ正確なデータの把握と発信にさらに努めていきたいと思います。
編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2020年4月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は
鈴木氏のブログをご覧ください。
転載終わり。