羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

アルスラーン戦記 1

2015-07-02 21:40:21 | 日記
「ペシャワール城塞まであと少しだといのにッ!」アルスラーンはダリューン、ファランギース、ギーヴ、エラムと共に峠の道を馬で駆けていた。城塞はもう見えている!「目的地に近付く程、待ち伏せする方は容易い訳だ」ボヤくギーヴ。「いくら包囲網が的確であろうと!」追い縋った追手を槍で谷に突き落とすダリューン。「おわぁああッ!」兵は谷底に消えた。「あっ! 待ち伏せか」『あっ!』が色っぽいファランギースは前方のルシタニアの兵団に気付いた。「我が隊の手柄にしろ!」「おおーッ!!」ルシタニア兵団は指揮官の檄に突進し始めた! その先頭の騎兵の顔面目掛け、一羽の鷹が矢の様に急降下し、目元を爪で引き裂いた!「ぬぁッ?!」負傷した兵は後ろの兵諸とも転倒した。「アズライール!」アルスラーンは鷹、アズライールの姿を認めた!
アズライールは上空を旋回し、崖の上の主、キシュワードの腕に止まった。側にはナルサスとペシャワール兵団がいる!「王太子殿下を守り参らせよ! ヤシャスィーンッ!!」「おおうあああッ!!!」ペシャワール兵団は崖を馬で駆け降り出した! 崖下のルシタニア兵団に先制で槍を投げ付ける!「キシュワード!!」「アルスラーン殿下ッ!」アルスラーンの呼び声に応え、キシュワードは双剣を抜いた。「よくぞ御無事でぇッ!!」キシュワードは鐙の扱い等、下半身だけで馬を操り、崖を駆け降り出した!!「うかつに俺の領地に入ったことを後悔するがいいッ!!」キシュワードはアルスラーン達と交錯後、その背後に迫った追手達を双剣で次々斬り捨てていった!『領地』とは、『俺の陣地』といった意味であると思われる。「引け! 引けぇッ!」追手達は退散し始めた。キシュワードは一瞬逡巡する様子を見せたが、「追う必要は無い!」ナルサスが崖上からそろそろと馬で降りてきた。「お主らの蛮勇を伝え聞かせ、
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アルスラーン戦記 2

2015-07-02 21:40:13 | 日記
手出しさせないようにするのが得策だ」ナルサスの後ろには頭巾を被ったアルフリード密かに乗っていた。様子を伺うアルフリード。『蛮勇』は『お前ら暴れん坊』ぐらいの意味と思われる。「それもそうだなぁ」キシュワードは双剣を回転させて器用に鞘に納めた。
「ナルサス」アルスラーン達も馬を寄せて来た。「ナルサス、先にたどり着いていたのか」ダリューンも黒馬を寄せた。「キシュワードもよく来てくれた」「はっ!」キシュワードは馬から降り頭を下げた。「よくぞこのような辺境地へ御出下さいました。ようこそ、東方国境の要、ペシャワール城へ!」「ああ! あ?」何か礼の言葉でも続けようとしたアルスラーンだったが、ナルサスの後ろでモソモソしているアルフリードに気付いた。「ナルサス、そこの者は?」「いえ! これは」少し慌てるナルサスだったが、アルフリードは自分から馬を降り、頭巾を取った。外套付きの頭巾を取ったがその下の頭にはまた頭巾を巻いている。ゾット族ではよくあることである。「私はアルフリード、ナルサスの『妻』だよ!」アルフリードはあっけらかんと言い放った!!「なっ」「あっ」驚くダリューンとアルスラーン。やや遅れて、「ええっ?」エラムは衝撃を受けた!
ペシャワール城塞の城門が開き、アルスラーン一行が入城すると、兵達は歓声を上げ、剣を掲げる者もいた。「もう少し離れろ」馬を進めながら、後ろからガッチリしがみ付いてくるアルフリードにナルサスは言った。「ナルサス、別行動になってる間に何があったぁ? こんな大事な時に」ダリューンは面白がった。「いや」返答に窮するナルサス。「ナルサス様」頭を抱えるエラム。ファランギースは特に構わぬ様子だった。「旅は孤独だ。策士殿とはいえ、魔が差すこともあるだろう。こんな粗野な娘でも、乾いた大地で出会えば、
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アルスラーン戦記 3

2015-07-02 21:40:03 | 日記
恵みの花に見えるだろう」ギーヴもイジり出した。「そうなのか?」皆で馬から降りると、アルスラーンも真に受けて続けてきた。「んん、弁明してくれアルフリード」「うん、正式に結婚はしてないんだぁ。だから今はただの情婦だけど」ナルサスの腕を取るアルフリード!「情婦だと?!」面食らうダリューン。「ナルサス様っ」青ざめてさらに頭を抱えるエラム!「違う! 俺は何もしておらぬ。恐れていたところを救ってやっただけだ! もういいっ」髪を掻き上げ、うんざりしたナルサスはその場を離れようとした。「襲われていた?」ダリューンが反応した。「あの銀仮面が現れた、ここに至るまでの包囲網はアイツの策だ」ため息をつくダリューン。
「王太子殿下!」城からキシュワードと共にバフマンが出て来た。「バフマン!」アルスラーンは駆け寄った。「おおっ、よくぞ御無事で」「世話になるぞ、バフマン。キシュワード! パルスはこのペシャワールから、反撃の狼煙を上げる。皆の力を貸してくれ!」「ほう、これは殿下、少し見ない間に随分と逞しくなられたようだ」キシュワードは髭を触りながら、嬉しそうに言い、表情を引き締めた。「はっ!」跪くキシュワードとバフマン。「ペシャワール城にある騎馬2万、歩兵6万上げて、殿下に忠誠を誓わせて頂きます!」兵達も跪いた。「うん!」頼もしそうなアルスラーン。しかしバフマンは浮かぬ顔をしていた。
夜、ヒルメスは崖の上からペシャワール城塞を見下ろしていた。「念入りな包囲網でしたが、まんまと取り逃がしてしまいましたなぁ」地中から魔術師が姿を現した。「まだ終わった訳ではない」ヒルメスは冷然と応えた。
城ではギーヴが大浴場から上がり簡単な衣を着ると、飲み物と殻付きの塩煎り種の類の置かれた休憩室に腰を下ろした。「はぁ~。割りに合わんなぁ。
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アルスラーン戦記 4

2015-07-02 21:39:55 | 日記
この数週間、俺ときたらなんだ? 子供のお守りに気を揉んでいただけではないかぁ。ナルサスはこの道中、粗野だが中々美しい少女と一緒だった」ギーヴの回想の中では朗らかに笑ってるアルフリード。「ま、それはいい。面白くないのは」塩煎り種を手に取るギーヴ。「ずっとファランギース殿と一緒だったのが、俺ではなく、ダリューンだったことだ!」ギーヴの想像の中では朗らかに笑い合ってるファランギースとダリューン。ギーヴは摘まんだ塩煎り種の殻をパリィッ、と割った。
「それはすまなかったギーヴ」アルスラーンがすぐ傍に来ていた!「殿下?!」アルスラーンはギーヴの隣に座った。「お主の気持ちを察せず、無理をさせてしまった」「あ、いや、どうしたのです? こんな夜更けに」「ここまでの道中の礼を言いたくてな。本当に世話になった」ギーヴは面と向かって礼を言われ、やや間が開き、飲み物を一口飲み、髪を掻き上げた。「お気になさるな。ルシタニアのやり方は俺も気に入らない、連中に一泡吹かせられるなら、まあ、そっちに付いた方がいい」「面白いな、ギーヴは」アルスラーンは笑顔を見せた。「それは、どうも。それに! さっきの話、俺は嘆いた訳じゃない」「え?」「美を求める旅の間には苦難もある。何かを追い掛け、求めるのが! 人生の面白さというもの。決して腐っていた訳ではこざいません」「あ、ああ」アルスラーンはよくわからないが納得することにした。
「ナルサス居るぅ~?」ナルサスの部屋にアルフリードがふぁっと入って来た。ナルサスはおらず、替わりにエラムがナルサスの身の回りの品々の整理をしていた。「んん?」顔を上げるエラム。「お前か」エラムはすぐに作業戻った。「ナルサス知らない?」「ナルサス様ならここの将軍達とまだ会議中だ」「んん、あの人忙しいんだねぇ。あ、そうだ、じゃあナルサスのこと色々教えてよ!」
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アルスラーン戦記 5

2015-07-02 21:39:45 | 日記
「あのさぁ!」なんなの? という顔で再び顔を上げるエラム。「ナルサス様に馴れ馴れしくしないでくれないか? 知り合ってから何日も経ってないくせして」「付き合いの長さと深さは別物よぉ? そんなことわからないの?」バンッ! エラムは荷物を卓に強く置いた!「ナルサス様の好物も知らないくせに」「あたしの料理を不平を言わずに食べてくれたわぁ」「それはナルサス様がお優しいからさ!」アルフリードに向き直るエラム!「お前なんかの料理が口に合う訳ないだろ!」ムッとするアルフリード。「お前とは何さ! 言っとくけどっ」アルフリードはエラムに近付いた。「あたしはアンタより歳上なのよ!」「ああ! そうですか? とにかくナルサス様の邪魔をしたら許さないからなぁッ!」「何よぉッ!」額を突き合わせ睨み合うアルフリードとエラム!「フンッ!」互いに顔を反らした!!
ファランギースは自分の部屋で矢を自作していた。そこへ来たアルフリードは近くの椅子に勢いよく座った。「んああッ! もうっ、なんだよアイツ!」ファランギースは暖炉の傍で作業している。上着を羽織り長い腰布も巻き、胸当ても付けていて、半裸の旅装束より随分落ち着いた格好をしている。「ナルサスのなんなんだよぉッ! ふぅうッ!」「お主」ファランギースは顔を上げた。「ナルサス卿のことを好いておるのか?」「え?」すぐには応えず、ファランギースの胸当てをしてもなお、大きな胸をチラリと見るアルフリード。
「だったらいけないのかい?」「もし、ナルサス卿を好いておるのなら、妨げにならぬようにすることじゃ」ファランギースは作業を続けながら話した。「あの御仁は今のところ、一人の女よりも一国を興すことに夢中になっている。しばらくは見守ってやるのがよかろう」「国を興すなんて意味の無いことだよ、
     6に続く