羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

恋仲 1

2015-07-29 23:16:37 | 日記
「久し振り。元気、だった?」「まあ、あかりは? 大丈夫だった?」「うん、なんとか」レストランでぎこちない葵とあかり。『彼氏』の翔太もいる。「あ、最悪!」葵は何の着信も無いスマホを取り出し、仕事の用ができたと適当に札を置いてそそくさと退散してしまった。「ホント、訳わかんねぇ!」葵は公平に電話を掛け、愚痴りながら自宅マンションの前まで帰ったが、家の前で公平があれこれ荷物を持って自分と電話で話していた。「何してんの?」「来ちゃった!」公平は実家の豆腐屋に夏休みを貰い、夏の間居候させてくれという! 戸惑っていると妹が帰って来た。別人の様に美しくなった妹に最初は葵の彼女と勘違いしたが、妹の七海と知ると「運命だ。1度離れ離れになった男女がだよ、こうして再会するなんて!」と一人で盛り上がり、うやむやに葵と七海の家に居座ることになった。
葵が帰った後、翔太と食事を終え翔太に葵と引き合わされたことに戸惑いながら帰宅したあかりが気持ちを落ち着けていると、同居人の太めの体型の高梨恵里香が浴衣で帰って来た。祭デートしてきたという。「あんなに金魚掬うの下手な男、見たことない」と恵里香は一匹だけ持ち帰った金魚を水槽に入れた。水槽には元々二匹の金魚がいたが、一匹増えて三匹になった。
公平が同窓会を開くと意気込む翌日、翔太が研修医として優秀に働く病院にその公平が前触れも無く現れた。「来ちゃった」「公平」少なからず驚く翔太。その日、葵は建築事務所で始めて設計を任された。幼稚園の兎小屋だった。明日までに仕上げろという。「ほんっと水臭いよなぁ」病院では公平が何も知らせてこなかった翔太に文句を言っていた。「あかり、皆と顔合わせ辛いんじゃないかと思って」翔太はそう言ったが、公平は7年経ち、誰も気にしない、同窓会来いと誘った。夜、同窓会の時間になったが、
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恋仲 2

2015-07-29 23:16:28 | 日記
葵は設計の作業が終らず、電話で公平に断りを入れた。
設計を終え、葵が帰宅するとあかり、翔太、公平、妹の七海が集まっていた。突然東京で開かれた同窓会はあかりと翔太しか来ず、流れで葵と七海の家でミニ同窓会を開くことになったらしい。「乾杯!」公平の音頭で会は始まったが、葵とあかりは気まずい。七海は思い切って「あれからどうしてたの?」切り込んだ。「仙台の親戚頼って、そこでなんとか」東京には5年前に教職免許を取ろうと出てきたという、「先生になりたいってずっと言ってたもんね」七海は懐かしがった。今通う通信制の大学は翔太が見付けたものだった。ここで公平が病院で聞いた翔太の優秀さをおどけて話し出し、益々気まずくなった葵は「設計全般、プロジェクト仕切ったり、現場で指示したり、今はテーマパーク! 動物と触れ合える」等と虚勢を張り出し、内情を知る七海を呆れさせた。
「いつどこで再会したんだよ」自撮り棒等を使ってやたら写真を撮りつつ、公平は翔太とあかりの馴れ初めを聞き始めた。「高校卒業した年、富山でたまたま、『冬』だったかな?」意外なことを言い出す翔太にあかりは戸惑った。さらに公平があかりのキス云々と言い出し、葵を動揺させていると、葵の元彼女の冴木が突然訪ねてきた。「来ちゃった」冴木はぐいぐい上がり込んできた! 呑み場所を川の見える屋上に移し、同窓会だか飲み会だかは続いた。冴木が葵の元彼女であることに公平は驚いた。知らん顔していたあかりだったが、七海に冴木が何者なのかリサーチし始めた。冴木は住宅メーカーの営業員、仕事は優秀! 歓談していると翔太は病院から呼び出しが入り抜けることになった。
翔太は普段から忙しく、日曜映画に行く予定がダメになったとあかりが話すと、公平があかりと葵と自分の3人で行こうと言い出した。「ああ、一緒に行ってやってくれよ」
     3に続く

恋仲 3

2015-07-29 23:16:18 | 日記
翔太は許したが、「俺はいい、行かねぇっつってんだろ!」と怒り出し、あかりも困っていた。翔太が抜け、あかりが下まで送ると続き、いたたまれない様子の葵を冴木は見ていた。「葵、俺達に会いたくなかったみたいだな」二人になると翔太はあかりに言ったが、「さっき、どうして嘘ついたの?『冬』に再会したって?」とあかりが問うてきた。「違ったっけ? ごめん、急ぐから」翔太は話しを遮って去って行った。
あかりは屋上に戻る前に、電話で七海にワインを溢したから公平のTシャツを葵の部屋から取ってきてほしいと頼まれた。恐る恐る葵の部屋に入るあかり。葵の部屋には建築デザインコンペの新人部門のポスターが貼ってあり、高校生の頃の思いのまま進路を進んでいる葵にあかりは微笑んだ。そして、部屋のワンピースの単行本に目を止めたあかり。机にメモと一緒に入れたはずの51巻だけが無かった。Tシャツを持って屋上に来ると、公平は酔い潰れており、七海はTシャツを受け取って葵と一緒に公平を寝かせに降りて行ってしまった。冴木と二人になるあかり。気まずい! 距離を置いて座ろうとするあかり。
「葵と付き合ってたの?」「え?」「ただの幼馴染みって感じじゃなさそうだし」冴木は笑った。あかりは否定したが、冴木は「ふ~ん」と近付いてきた。「どうして葵と別れたんですか?」「他に好きな人ができちゃって、仕事で落ち込んでた時に支えてくれた人。弱ってる時に優しくされて、つい揺れちゃったぁ、みたいな。そういうことってない?」「さぁ」身につまされたようだが、笑ってごまかすあかり。「結局上手くいかなかったんだよねぇ。なんでか知らないけど、葵といる方がホッとするなぁって」「わかります。葵、昔からそういうとこあったから」二人に間ができると、葵が戻ってきた。葵と冴木は公平の介抱をしているという七海が、将来いい奥さんに
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恋仲 4

2015-07-29 23:16:09 | 日記
なる、ならないと親しげに話しだした。
「そろそろ帰ろうかな?」あかりが帰ろうとすると、冴木はあかりを送るよう促した。「色々大変だったな」「まあ、ね」葵はあかりと共にマンションの前に出た。あかりの父はあれから行方知れずだという、冴木は屋上から歩いてゆく葵とあかりを見ていた。途中、雨が降りだすと、葵はコンビニで傘を1本買ってきた。「1本しかなかった」葵は傘をあかりの方に傾けて差して歩いた。片方の肩が濡れているとあかりに言われても、構わない葵。翔太の話になった。「良かったな再会できて、医者だし、優秀みたいだし。あいつといればもう苦労すること無いし」「翔太が医者だから付き合ってると思ってんの?」「昔から両思いだったんだろ?」「え?」「だから花火大会だって、二人で行かせてやろうとしたんだよ」その日の堤防でのキスのことを思い出す二人。「なんであんなこと?」「なんで葵はそうなの?! そもそも花火大会だって、誘ってきたの葵でしょ? 一人で勘違いして勝手に結論出して! 次の年の『夏』だって」「次の年?」「もおいい、やっぱ来なきゃよかった」あかりは雨の中、葵を残し傘も受け取らず、歩き去った。
葵は拒否された傘を差せず、ずぶ濡れのまま、マンションの部屋の前まで帰ってきた。ちょうど部屋から出てきた冴木は濡れるのも構わず、葵を抱き締めた。翌朝、起き出した公平に「翔太とどう接していいかわからないんでしょ? 完全に昔と立場逆転したもんなぁ。気にすんなよ、また昔みたいにすぐ戻れる」等と言われると葵はまた荒れた。「戻りたいなんて思ってるのお前だけだから! 皆変わったんだよ、変わってないのお前だけ! いつまでもガキみたいなこと言ってんじゃねーよ。もうあの頃とは違うんだよ」公平は返す言葉が無く、七海はその様子を見ていた。
葵は兎小屋の
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恋仲 5

2015-07-29 23:15:59 | 日記
設計図を事務所に出し、許可は下りたが、昨夜のあかりとの別れと朝の公平との喧嘩でやや荒んでいた葵は「2年働いて兎小屋ですよ?」と思わず口答えしてまい、平時は当たりの強い事務所の先輩の磯原達に心配された。「友達と喧嘩? さっさと謝って仲直りしちゃえよ」身も蓋もない磯原。「無理ですよぉ、男女に友情は成立しませんから」混ぜっ返す富永。「過去のことをウジウジしてるのは男だけだよ?」「それはそうかも」「ようは男の器の問題かな?」磯原、富永、小谷の順で畳み掛けてきた。「器か」真に受ける葵。
『器』について考えた早上がりの葵が帰宅すると公平が部屋にいない。「七海、公平は?」プリン片手に通り掛かった七海に問う葵。「夜行バスで富山帰るって、お兄ちゃんのせいでしょ?」「え?」「恥ずかしくないの? あかりちゃんの彼氏に劣等感感じて、見栄張ってテーマパークとか嘘ついて、公平に八つ当たりして傷付けて! 器小っちぇえ」毒づく七海!! 部屋に戻った葵は公平のSNSを見た。昨夜写真を撮りまくっていた同窓会の写真を上げていた。コメントは「皆変わってない」葵は自室を飛び出した! ソファで寝転がっていた七海に見送られ、葵は家を出てゆく。
走って夜行バスの発着場に着くと、荷物を纏めた公平がいた。「今朝は言い過ぎた。ごめん」公平は父が倒れ、秋になったら正式に豆腐屋を継ぐことになり、上京は最後の思い出作りだったとを告白した。あの頃に戻れるかと期待したという。バスが来た。乗り込もうとする公平。「そんなに簡単に行くかよ! 器、デカくねーよ!! でも、俺も戻りたい。たった3日で決めつけんなよ、もうちょっと時間くれよ」公平はバスに乗らなかった。居候、続行! その夜、葵は映画のチケットを3枚サイトで購入した。
公平はあかりを映画に誘い、あかりはこれを受けた。
     6に続く