羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 1

2015-07-25 22:22:34 | 日記
「いかん! あの要石に触れちゃいかんのだ!!」老人は夜間工事の作業員に必死で訴えたが相手にされず、やむを得ず老人は立ち去っていった。「ようし、上げろう!」作業員達は重機で要石を持ち上げた。石の底は放射状になっており、そのトゲの1本1本が奇妙な『箱』に突き刺さっていた。「この箱はなんでしょうねぇ?」要石が抜かれると、一つの箱の中で蠢く者がいた! それは呻きながら箱から飛び出した! 巨大な頭!! 首は頭に対してやや長く蛇とも蛭とも腸ともつかないものだった! その一匹は飛び掛かり、重機ごと、作業員一人を喰い殺した!! 笑いながら、他の箱からも男女の『頭』達が出てくる! 逃げる作業員達を次々と、近くの重機なども諸とも喰い散らかす頭達!!「ほしいよぉ」「ほしいよぉお」「日崎御角の首が」「ほしいよォッ!」頭達は口々に喚いた。
翌朝、潮がトイレでまでとらに襲われ、ウンザリして茶の間までくると紫暮の書き置きがあった。『さがさないでください』と書かれている。潮は紫暮は勝手に槍を持ち出したことにショックを受けたからと、楽観的に考えた。だが、買い換えた? テレビのニュースで件の工事現場の惨殺事件が報じられると、顔色を変えた!「お前、昨日の晩、殺っただろ?!」「殺ってねぇって!」問答無用で槍で殴られ、とらは怒った!「人間喰ったって悪い気はせんけどよぉ、ワシは殺ってねぇんだよォッ!!」とらが放った電撃は全て槍に弾かれる! 潮の動きも早い! とらは上空に逃れた。「ケッ、止めた止めたぁッ! もっと簡単に人間が喰えるとこに行ってやるぅ! お前はいつか必ず食ってやるからな!!」とらは潮の前から飛び去った。「クソゥッ! 槍に不覚を取ったのも500年も人を喰ってねぇからだ!」とらは街の中心街へ飛んだ。手っ取り早く満腹になるつもりだった。
一方、父が脚を怪我した為、
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うしおととら 2

2015-07-25 22:22:26 | 日記
麻子が一緒に買い物にゆけなくなったが、(天気はいいし、久し振りに!)奇妙な小物だらけの部屋で暮らす真由子は、一人で出掛けてみることにした。
とらを逃した潮が探しに出ていると、件の工事現場の近くを通りかかった。老人が警官に何か訴えている。「餓眠様だ、餓眠様が起きてしまったんだぁ!」「はいはい、あっち行って下さいねぇ」祖父に代から伝わっていた、首棺に『餓眠』が入っていた、本に書いてある、と持っていた古い本を警官に示す老人だったが、「向こう行って下さい!」と突き飛ばされてしまった。倒れそうになったところを潮が受け止めたが、落ちた本に載っていた写真に潮は驚いた。「知ってるヤツに似てる」「日崎御角様、明治の偉大な霊能力者だった御方だよ」「井上にそっくりだ」御角は真由子とよく似ていた。御角こそが、要石で餓眠を封じたのだという。
餓眠達が仇である日崎御角を探し、真由子が電車で街の中心街へ向かう中、とらは改めて見る都会のビルと車と人混みに戸惑っていた。「なんじゃこりゃあ?! でっかいキラキラ! ざらざら鬱陶しい奴ら! 人間の多さ!! いや、食い放題ってことか?」とらは悪い顔で笑った。(こりゃいい、しこたま喰って、アイツをブチ殺してやるぜ!!)とらは思いっきり車道に降り立ったが、姿を消しているので運転手達には見えてない。とらは速攻で車に跳ねられビルの外壁にめり込んだ!「おい、コラァ、今ワシにぶつかった奴ぅ!!」とらは『車達』に凄んだが、ただの車な為、なんの返答もない。しまいに『車』を問い詰めた勢いでパーキングメーターに激突したとらは、「下手に出てりゃつけ上がりやがってぇ!!」怒って周囲の車全てに電撃を喰らわし、壊してしまった!「これで懲りたか?! 仲間にもよーく言っとけよ!!」とらは一先ず気が済んで去ったが、突然車がスパークして壊れてしまい、
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うしおととら 3

2015-07-25 22:22:17 | 日記
乗っていたいた人々は訳がわからなかった。
中心街に着いた真由子がショーウィンドーを覗いたりしている頃、潮は件の工事現場近くのベンチで老人の話を聞いていた。「その方は大層綺麗だったそうだ」祖父の日記によると今、工事の行われていた不知坂は明治の頃の所謂怪奇スポットで、近隣住民は霊媒師や祈祷師に頼ったが、いずれも惨殺され、警察もお手上げだったという。「やってみましょう」そこへ現れたのが日崎御角だった。祖父は御角がか細く、美しかったので思わず追いかけてゆき、御角が要石で餓眠を封じるのを目撃した!「日崎御角、しかと覚えたぞ!!」「お前が何度生まれ変わろうと、我らが必ず喰ろうてくれるッ!」餓眠達は恨みの声を上げながら、要石を箱ごと突き刺され封じられた!!「この石は決して動かしてはなりません」御角は幼い祖父にそう伝えたという。
蘇った餓眠達は街で日崎を探し求め、「日崎ぃッ!!」手当たり次第に出会した『女』を、場合によっては乗っていた車両ごと喰らって殺して回っていた!「違うッ! 日崎じゃない!!」老人の話を聞く潮は問うた。「もし、日崎御角にそっくりな女を見付けたら?!」「喰い殺されるな、絶対に」老人は諦めたように言った。
深刻な事態が進行する中、とらはどうにか人間を食べようと街で悪戦苦闘をしたいた。希に姿を消しても子供などにはバレることがあるが、構わずガラス窓を透過して建物の中の子供を喰おうとしたが、バチィンッ! 上手く透過できず微妙にガラスに貼り付いた具合になってしまった! 間近で見た子供は大泣き。とらは窓に貼り付いた顔をディズニーアニメのようにぐぃ~んっと伸ばして引き剥がし、続いて街行く女を喰おうとしたが香水の臭いにやられ、「くっせぇッ!」と断念! それではと街行く男を喰おうとしたが今度は
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うしおととら 4

2015-07-25 22:22:08 | 日記
オーデコロンの臭いにやられて喰えず、くしゃみを連発するハメになった。
真由子は『M』のマークでお馴染みの、マドロスバーガーでハンバーガーをテイクアウトで買っていた。「お母さんの分も買ってあげようっと」追加注文する真由子。スマホはマナーモードで鞄に入れていた。潮がケータイで電話したが繋がらない! やむ無く麻子に掛けた。「中村、井上と一緒か?!」「ええ、一緒じゃないけど? 鏡町に出てると」と店で洗い物をしながら答えたので、速攻電話を切った。当然麻子は怒ったが、それどころじゃない!! 潮は老人の車で鏡町(中心街)に向かった!
とらはというと、『マドロスバーガー』の店先で、すっかり途方にくれていた。現代人はとらからすると化粧品などが『臭い』上にアクセサリなどの妖怪が好まない『金物』をやたらとつけている。不味そうである。(好き嫌いせずに、ここは無理してでも喰わんと)とショボくれた顔で思っていると、店から誰か出てきた。「ああ?」振り向くとら。真由子だった。真顔になるとら。(柔らかそうな体、綺麗な匂い、食べやすそうな脚、しかも金気の物は一切無しときたもんだ)すぐによだれを垂らすとら!(おいおいおい! いるところにゃいるもんだな!! こいつしかいないッ!)横断歩道が青になり真由子が歩きだすと、「いただきぃッ!!」とらはかじり付こうとした! その時!!
(ハッ!)とらは気配に気付いた。近くに、いる!!(ワシの他の化け物が、来る!)「見付けたぁ」ビルの陰から3体の餓眠が現れた。「日崎ぃ、御角ぉッ!!」道路を透過して地中からも2体現れた!「見付けたぞォッ!」餓眠達は真由子に襲い掛かってゆく!「なんだコイツら?!」困惑するとら。餓眠の1体が後ろから真由子に喰い付こうとすると、真由子の正面から獣の槍が飛んできた!
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うしおととら 5

2015-07-25 22:21:57 | 日記
「きゃあ!!」咄嗟にしゃがんで槍をかわす真由子! 餓眠も回避した。槍はマドロスバーガーの店舗の壁に刺さった!(獣の槍?! ということは!)察するとら。「井上! 逃げろォッ!」潮だ! 槍を手離したので、半ば変化が解けている。「蒼月君、どおしたの?!」戸惑っていると、再び餓眠が真由子に襲い掛かった! 悲鳴を上げる真由子!!「槍よ来い!」潮に呼ばれ、槍は餓眠を打ち払いながら潮の元に戻った!「またかッ!」厄介がる餓眠。変化した潮は真由子を庇って立ちはだかった。
変化した潮は後で説明すると、真由子を近くのデパートの中に逃がした。「おのれ小僧! くたばりゃあああッ!!」喰い付いてくる餓眠!「生首野郎がっ!」潮は槍を突き出したが、餓眠は槍を噛んで受けた!「人間のガキがッ! 百年早いぞ!!」髪で潮に絡み付く餓眠! 他の2体の餓眠が潮の両足に喰い付いた!「ぎゃああッ!」絶叫する潮! しかし変化した潮の体は重機よりなお硬く、文字通り歯が立たない! 餓眠達は離れた。「硬い奴だなぁ、こんな奴、喰わんでいいわいッ!!」餓眠は髪を操り、潮を近くの車のフロントガラスにぶっ込んだ!
「日崎はどこじゃあッ! 日崎ぃいいッ!!」餓眠が外で喚く中、デパートの1階で震えながら出入り口を見ている真由子。餓眠の陰が迫る! 真由子は悲鳴を上げて駆け出した!! 餓眠達は出入り口のガラスを突き破って中に入ってきた! 騒然とする店内! 餓眠は壁から棚から商品から、お構い無しに噛み砕きながら真由子を追った!!(あれは何? なんで私が? 脚! お願い走って!! 靴が脱げそう!)真由子はエレベーターに走った!「お願い閉めて!!」閉ざされるエレベーターに迫る餓眠! ギリギリのところで扉は閉まった!!
外では、車にぶっ込まれ変化したまま気絶する
     6に続く