雅志は成り行きで働くことになった居酒屋『野沢』に古田と樫山を呼んだ。「どうぞ」雅志は得意気に焼き魚と刺し身を出した。「おおっ」「お前が作ったのか?」「まあね」相変わらず器用な雅志に感心する古田。「結構いけんな」焼き魚をパクつく樫山。「これで食っていけんな」冗談めかす古田。満更でもない様子の雅志に、樫山達は1ヶ月くらい地方巡業に出ると話した。
「まーちゃん、烏賊の刺し身上がったよぉー」話の途中で店主の野沢から促され仕事に戻る雅志。だが、野沢は雅志と話したかったらしく軽く自分も手を止めヴァイオリンを止めたことに触れた。「次の目標見付けないと」「目標ねぇ、まーちゃんもその内見付かるよ」チラリと目を合わせる樫山と古田。ここで堅気には見えない中年の男女の客が注文し、雅志の代わりに野沢が慌てて対応して何やらコソコソと話して笑い出し、雅志は奇妙に思っていた。「バンドはいいぞぉ! お前も来れば良かったのに」樫山は店から去る際にそう言ったが、古田はその樫山を見ていた。「ま、がんばれよ」古田は雅志にそう言って、二人は帰っていった。
件のキャバレー回りのバンドで、古田は衣装を着てステージでギターを弾いていたが、樫山はボーイの格好でホールやバックヤードで雑用をしていた。「俺も演奏させて下さいよ」マネージャーに頼む樫山。「古田を見習え」マネージャーは相手にしなかった。樫山の演奏は学生レベルでキャバレーバンドでも通用していなかった。
ある日、雅志が『のざわ』に行くと店は休業するという、「まーちゃん、急にカミさんの実家に行かなきゃいけなくなって」数日で戻り、給料もその時払うという。人の良い雅志は野沢の話を鵜呑みにするより他無かった。給料を貰いそびれた雅志は大家に家賃を払うと、金欠になり、たまに顔を出した大学でも腹が鳴って仕様がなくなった。
2に続く
「まーちゃん、烏賊の刺し身上がったよぉー」話の途中で店主の野沢から促され仕事に戻る雅志。だが、野沢は雅志と話したかったらしく軽く自分も手を止めヴァイオリンを止めたことに触れた。「次の目標見付けないと」「目標ねぇ、まーちゃんもその内見付かるよ」チラリと目を合わせる樫山と古田。ここで堅気には見えない中年の男女の客が注文し、雅志の代わりに野沢が慌てて対応して何やらコソコソと話して笑い出し、雅志は奇妙に思っていた。「バンドはいいぞぉ! お前も来れば良かったのに」樫山は店から去る際にそう言ったが、古田はその樫山を見ていた。「ま、がんばれよ」古田は雅志にそう言って、二人は帰っていった。
件のキャバレー回りのバンドで、古田は衣装を着てステージでギターを弾いていたが、樫山はボーイの格好でホールやバックヤードで雑用をしていた。「俺も演奏させて下さいよ」マネージャーに頼む樫山。「古田を見習え」マネージャーは相手にしなかった。樫山の演奏は学生レベルでキャバレーバンドでも通用していなかった。
ある日、雅志が『のざわ』に行くと店は休業するという、「まーちゃん、急にカミさんの実家に行かなきゃいけなくなって」数日で戻り、給料もその時払うという。人の良い雅志は野沢の話を鵜呑みにするより他無かった。給料を貰いそびれた雅志は大家に家賃を払うと、金欠になり、たまに顔を出した大学でも腹が鳴って仕様がなくなった。
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