ウェディングドレス姿のあかりの待つチャペルへ、三浦葵は海岸沿いを走っていた。蒼井翔太も新幹線から降りてホームを走っていた。「アオイさん遅いですね」チャペルのスタッフはあかりに言った。結婚式当日、一人は新郎として、一人は友人代表として、二人は走っていた。
3人が再会する前、葵はアシスタントとして東京の建築事務所で働いていた。押しが弱く人の良い葵は仕事で交渉するのが苦手で、あまり上手くいっておらず、交際していた同僚の冴木にも振られていた。「お前変な食べ方するなぁ」仕事の後で磯原達と食事に行き、溶いた生卵に餃子を浸けて食べて呆れられたりもしていた。
帰宅すると、高校の友達の公平から電話があり、SNSを見ろと言う、見ると、同窓会の誘いだった。苦笑しながら画面を見ていたが、必要な持ち物は『あの頃の思い出』と書いてあり、あかりとの日々を思い出した葵。思わず『芹沢あかり』を検索するが、あかりは未登録だった。窓側のスペースに置かれたワンピースの単行本に目をやる葵。51巻だけ無かった。
高校3年の夏、水泳部の葵は最後の大会に出ていた。「葵ぃッ!! 行け!」当時のあかりは笑顔で声援を送ってくれた。大会の結果は意識し過ぎてフライングしてしまい、失格だった。帰宅して、ドアに貼った筋トレメニューの張り紙を剥がそうとすると、あかりがドアを開けてきて、頭を打たれた葵。「あ、痛ぇっ」「もしかして泣いてた?」今日の失敗と子供の頃、チビでイジメられっ子だったことを引き合いに散々イジってくるあかり。それでも部屋のワンピースの単行本を取ってベッドで呑気に読み出すもう子供ではないあかりにドギマギする葵。家まで送ると、「葵らしくて格好よかった、バイバイ」と笑顔で去ってゆくあかりに、(ずっと、恋をしていた)と、後の葵は思い返した。
その日、建築事務所で
2に続く
3人が再会する前、葵はアシスタントとして東京の建築事務所で働いていた。押しが弱く人の良い葵は仕事で交渉するのが苦手で、あまり上手くいっておらず、交際していた同僚の冴木にも振られていた。「お前変な食べ方するなぁ」仕事の後で磯原達と食事に行き、溶いた生卵に餃子を浸けて食べて呆れられたりもしていた。
帰宅すると、高校の友達の公平から電話があり、SNSを見ろと言う、見ると、同窓会の誘いだった。苦笑しながら画面を見ていたが、必要な持ち物は『あの頃の思い出』と書いてあり、あかりとの日々を思い出した葵。思わず『芹沢あかり』を検索するが、あかりは未登録だった。窓側のスペースに置かれたワンピースの単行本に目をやる葵。51巻だけ無かった。
高校3年の夏、水泳部の葵は最後の大会に出ていた。「葵ぃッ!! 行け!」当時のあかりは笑顔で声援を送ってくれた。大会の結果は意識し過ぎてフライングしてしまい、失格だった。帰宅して、ドアに貼った筋トレメニューの張り紙を剥がそうとすると、あかりがドアを開けてきて、頭を打たれた葵。「あ、痛ぇっ」「もしかして泣いてた?」今日の失敗と子供の頃、チビでイジメられっ子だったことを引き合いに散々イジってくるあかり。それでも部屋のワンピースの単行本を取ってベッドで呑気に読み出すもう子供ではないあかりにドギマギする葵。家まで送ると、「葵らしくて格好よかった、バイバイ」と笑顔で去ってゆくあかりに、(ずっと、恋をしていた)と、後の葵は思い返した。
その日、建築事務所で
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