ウクライナの首都キエフが数日中にも陥落することが予想される。緒戦で航空戦力を失い、旧ソ連時代の軍備しか持たないウクライナ軍にとって、近代化され、ハイブリット戦の能力を持ったロシア軍の攻勢に対して首都の維持や戦闘続行は至難の業であろう。そして、この戦争の帰結は、それでもウクライナ軍がゲリラ戦などで抵抗することが可能かに掛かっていると思われるが、西側諸国にとっても、この戦争が長引くよりは、ある意味では短期で終結した方が世界経済に及ぼす影響からしても良いと思っている向きがあるかもしれない。それが冷酷な国際政治の一面でもあろう。
しかし、プーチンのこの侵攻への決断は、ロシアのしたたかな裏の面(約束は守らない)を国際社会に印象付けたという面が強く、旧ソビエト共産主義の時代を思い出させ、中国・北朝鮮などの権威主義連合対西側諸国という新たな冷戦構造を生じさせたという点からすると、全世界にとっても、今後の人類の発展の上においても大きな打撃となることだろう。我が国にとっても、少子化による人口減少のインパクトが顕在化し、国民所得の減少と格差が増大する中で、両陣営の狭間に立たされることは、ある意味では、米国の保護の下で経済的繁栄が得られていた冷戦時代よりも遙かに困難を来すであろうことは目に見えている。
プーチンが何故、この誤った決断に至ったのかは、彼のKGB幹部としての経歴やロシアの歴史的経緯が影響しているのだろうが、何よりも、トップに立つ者の孤独と、個人的な老化が大きいものではないかと思われてならない。人間は、絶えず、自省し、客観的な視点を持つように心がけねばならないが、過去の記憶や自らの持つ欲望というものが、客観視を邪魔しがちである。しかし、世界的な指導者の一人としての彼のこの決断は、大きな誤りであるとしか思えない。