NHKの稲葉会長が、27日午後に行われた定例の記者会見で、ジャニーズ事務所所属のタレントについて、「番組などの出演が契約等ですでに決まっているタレントは、これまで通り継続するが、新規の出演依頼については、被害者への補償や再発防止への取り組みが着実に実施されていることが確認されるまでは当面行わない」と述べ、紅白歌合戦にも適用されるとの見解を示したとのこと。
10月2日に予定されているジャニーズ事務所の記者会見で、どのような内容が発表されるかにもよると思うが、被害者への補償や再発防止一つとっても、単に綺麗ごとを並べるのは簡単だが、それが着実に実施されているというのは第三者がどのように確認できるものだろうかと疑問に思う。例えば、現在までに報道されているのでは、被害者の一人である橋田氏のみが社長と面会して謝罪を受けたのみであって、他の被害者に面会や謝罪をして受け入れてもらっているということは聞かない。また、その他の4桁とも言われる被害者にどうやってコンタクトを取り得るのだろうか。このままでは、事務所の設けたホームページにアクセスが無かったとして、被害者への補償やケアの問題は放置されそうな気がしてならない。仮に、一人当たり数百万円の補償金を支払ったとして、それでトラウマが解消するはずも無い。再発防止にしても、単に、新事務所を作って従業員がそのまま移行するというのであったら、再び、頭の固い彼ら従業員が、テレビ局や辞めジャニタレントに圧力を掛けないという保証は無い。誰を新事務所のトップに持ってきて、その新社長がどのように統治能力を発揮出来るのだろうかという点が不明である。
しかし、考えてみれば、今の状態では、ジャニーズ所属タレントを紅白に出場させないという稲葉会長の決断は大きい。ジャニーズ事務所が依頼した特別調査チームの報告といい、きちんとした理性を持った人物が世の中には存在すると思うと心強い。そもそもタレントに責任が無いという理屈もあるが、しかし、つい最近までテレビ局などに圧力を掛けていたような権力構造を維持したままで、社長や事務所名を替えましたと言っても、そんなことで通るほど、喜多川氏の行ってきた、おぞましいほどの児童虐待・性加害事件は簡単なものではない。ジャニーズファンも、タレントを応援するなら、そのタレントに、一日も早く事務所から脱退をするように要請すべきであり、企業がそのタレントが出演しているCMなどの再契約を行わないとして、その企業の不買運動までするような不道徳かつ非倫理的な行動までしてはならない。そんなことをすれば、贔屓の引き倒しということにもなりかねない。
ところで、ジャニーズが出演しないと紅白の視聴率が低下するという説があるが、それは、安易にジャニーズに頼って来た従来のNHKスタッフの演出力の問題であって、私などは、実力も左程無いようなジャニーズタレントの顔を見ないので済むのであれば、逆に今年の紅白は是非見てみようと思う。
丁度、朝ドラでブギウギが始まることになっているが、主人公の笠置シヅ子は、戦前から松竹歌劇などで活躍していたスターであったが、戦時中は敵性歌手として活動が制限され、戦後は、私生児を産むなどして苦労していたところ、恩師の服部良一のブギウギの曲で再活躍することが出来、生活苦や飢餓に苦しむ国民を元気づけ、売春婦などからも応援されるぐらい庶民的に大人気歌手となった。しかし、現在、戦後活躍した歌手としては、美空ひばりなどの名前は挙げられても、途中で歌手を止めて演劇活動に重きを置いたせいもあって、我々からすると笠置シヅ子の名前はそれほど知られていない。懐かしのメロディなどの番組で彼女のブギウギの曲を聴いても、面白いとは思っても馴染みが無い。誰が歌っていて、どうして戦後にこんな歌が流行ったのだろうかと疑問が起こっても、その説明が今までは無かったように思う。しかし、時代背景からすると、彼女ほど戦後の日本を象徴する歌手はいないだろう。是非、紅白では、主演の趣里さんが歌うかどうかは別にして、時代背景のきちんとした説明と共に、笠置シヅ子が歌ったブギウギを何曲も取り上げて欲しいものだし、ドラマの中の歌劇団の一員として蒼井優などもラインダンスなどを披露して欲しい。また、朝ドラといえば、「あまちゃん」が再放送されて再ブレークしているという。このドラマの中で歌われた「潮騒のメロディ」などの曲も紅白の中で再び取り上げて欲しいと願っている。もちろん、最近の歌としては YOASOBIの「IDOL」なども何曲か取り上げて欲しいし、辞めジャニということでは、元スマップのメンバーにも出演して欲しい。このように考えると、ジャニーズタレントがいなくても、演出のやり方次第で視聴率は稼げるだろう。NHKには、各種の圧力に折れずにいて欲しい。