十数年前から、警察には、「オンラインカジノで勝ったということで海外から利用客の口座に送金があったが、どうすれば良いか。犯罪収益にはならないのか。」等の相談が銀行から寄せられたりしていた。ところが、その時点での警察の対応には、「グレーゾーンであるが、そのことについては銀行に対応を委ねる。」という消極的なものが見られた。
21世紀に入って、債権回収業者や裁判所などを名乗る架空請求事案が全国的に相次ぐようになった。この犯罪の背景には、現在の特殊詐欺や匿名流動型犯罪に通ずる、金主・指示役・掛け子・受け子などの役割分担をした組織的な犯罪組織がいて、住所を貸す私書箱業者や電話番号を貸す業者、集めた名簿を犯罪グループに譲渡する業者の存在が見られた。この犯罪については、初期の段階でも、一部の警察においては事件化に向けての積極的な動きも見られたが、警察の組織には都道府県警察という縦割り意識が根強く、全国的な広域捜査体制が整ったのは、少し年月が経ってのことであった。
オンラインカジノについても、2022年に、山口県阿武町で新型コロナウイルス対策関連の給付金4630万円が誤って振り込まれ、その口座の持ち主である男性が「(入金された給付金を)海外の数社のネットカジノで全部使った」と話したことがマスコミに大きく取り上げられたが、それでも、オンラインカジノはグレーゾーンという意識が国民の間には強くあり、捜査当局も、取次業者や決済代行業者などが複数介在して捜査が困難であることもあって、どちらかといえば、消極的な姿勢に終始してきたのではなかろうか。ところが、最近になって、オンラインカジノに関する相談件数が5年前よりも12倍にもなるというように、全国的に問題となってきて、ようやく、捜査当局も積極的に取り締まりを強化するようになってきたようだ。下記の政府広報は、2025年1月9日付で掲載されているが、そもそも、十数年前から、その兆しである相談も警察等には寄せられていたのであるから、ネットの一般的な利用拡大や、グレーゾーンであるという誤った認識もあったのだから、この利用が更に拡大し、オンラインカジノで多額の借金を抱える人も増えて来ることなどは、予見されていても当然であったように思われる。「拙速は巧遅に勝る」という諺もあるが、公的機関が何らかの対策をするようになるのは、何事も非常に遅い気がしてならない。行政や取り締まり当局には、現時点では兆候に過ぎないとしても放置すれば、その事案が如何に悪化するかを予見する目を持って、果断に必要な対策を行って欲しいものだ。
※ 政府広報より抜粋
オンラインカジノサイトの多くは海外で運営されているといわれています。その国では合法的に運営されているとしても、日本国内からこれらのサイトにアクセスしてオンラインカジノで賭博を行うことは、「賭博罪」などの犯罪となります。
オンラインカジノの多くは、サイト上に銀行口座やクレジットカードなどを紐付けたアカウントを作り、ポイントなどを購入してゲームを行い、獲得したポイントを換金する仕組みになっています。また、「入金不要 初回ボーナスプレゼント」のように初めは無料で利用できるサービスなどで巧妙におすすめして利用者を誘い込んでいます。こうした気軽さから、一般のオンラインゲームでの課金との境界が曖昧になり、犯罪に手を染めている自覚がないまま利用してしまうケースも少なくないとの指摘もあります。
「オンラインカジノは海外で合法的に運営されているから利用しても大丈夫」「日本には取り締まる法律がない」「違法だと知らなかったと主張すれば罪にならない」といった誤った情報発信も見受けられますが、日本国内からオンラインカジノにアクセスして賭博を行うことは犯罪です。オンラインカジノの違法性に「グレーゾーン」はありません。
さらに、インターネットで検索すると、おすすめのオンラインカジノを紹介するサイトや、オンラインカジノの利用方法を紹介するサイトが出てきたり、オンラインカジノでゲームに興じている様子を配信する動画が出てきたりします。こうした情報は、オンラインカジノがあたかも気軽に利用できるものであるかのような印象を与えますが、上述のとおり日本国内からオンラインカジノにアクセスして賭博を行うことは犯罪ですので、このような動画につられてオンラインカジノにアクセスすることのないよう、くれぐれも注意が必要です。