最近の我が国のマスメディアを見ていると、まるで、権力の意向に反することは報道しないということが徹底されているようである。例えば、昔、私は、A新聞の若手地方記者が、酔っぱらって、偉そうな態度で、まるで反権力の代表であるかのようなことを言ったのを直接聞いたことがある。それを聞いて私は、『お前の所属しているマスコミも、権力の一端ではないのか。』と内心反発を覚えたのだった。
ところで、最近のメディアは、ジャニー喜多川氏のアイドル志望の少年達に対する性加害の事実を知りながら、外国のメディアが報じるまでは報道しようとはしなかったし、今回の木原氏の妻の件でも、頑なに報道しないという態度を取っている。木原氏の件は、彼の妻が重要参考人として事情聴取の対象とされたことがあったというのは事実であったようだし、帰りのタクシーの中で、彼が妻に対して、『裏から手を回した。』等のことを言ったとも、週刊誌に掲載されている。もし、それが事実であったとするならば、また、2018年に再捜査体制が、突然縮小されたということがあったとすれば、事は、権力者の関係者に関わる事件に対して、何らかの圧力があったのか、それとも警察幹部が勝手に忖度したのかわからないが、我が国の刑事警察に関わる深刻な疑惑とも見なされる大問題ではなかろうか。大手のマスコミが、文春の報道した一連の疑惑に対して沈黙を貫き、或いは、松野博一官房長官の28日午後の記者会見の、「木原副長官からは『調査・捜査に圧力を加えたとの指摘は事実無根』との報告を受けた。報告を受け、私としてはそれ以上の対応を求めることは考えていない」と語ったとの記事を、そのまま掲載するだけで、まるで、その様は大手マスコミが全て官製メディアとなったかのようでもある。
私に対し、かって反権力を装って大言壮語した記者が現在もマスコミに在籍しているのかどうかは知らないが、最近のマスコミの有り様を見ていると、我が国のマスコミの矜持というものは全く無くなってしまったのだろうかと疑いたくなる。これでは、大衆が、新聞もテレビも見ようとしなくなっても仕方がない。まさに、マスメディアは、暗雲低迷の状況に陥っているとしか言いようがない。完全に国にコントロールされているロシアや中国のマスコミと、どこがどう違うと言うのだろうか。