バート・ヤンシュに思う、若かりし日々

バート・ヤンシュ
彼のことなんて、誰も知らないと思う。

６５年にソロ・デビューし、
後にペンタングルという
トラッド・グループで活躍したイギリス人。
（正確にはスコテッシュ）

そんな彼が逝った。

俺には特別な思い入れのあるレコードが
何枚かあって、
彼のデビュー作もそのひとつなんだ。

アコギの弾き語り。
その可能性を無限に広げた作品でもあり
今じゃ、誰も聴いてはくれないけれど、
実に「暗い美しさ」が漂う。

この作品は二十歳くらいのころ
よく酒を飲みながら聴いたものだ。
ひとりで「先の人生」を思いながらね。

あの時間は本当に美しい時間だった。

アナログ盤でなぜかコレを最初に買ったんだ。
その後、彼の関係している作品はすべて聴いたけれど、
俺にはコレだけが特別みたい。

独特の重さが漂うこのムードは
きっと俺の内面を映し出しているんだろうな・・・・。
すごく寂しい気持ちになるんです。
で、それが一番幸せだったりもする。

俺は今でも一人の時間を大切にする。
ひとりで音楽を聴いたり、
自分を見つめ直したり・・・。

そんな一人の時間に
ピッタリと寄り添う音楽を俺は好んで来た。

そして、このアルバムこそ
俺の二十歳の原点でもある。

久しぶりに聴いてみる。
そして、自分に問いかけてみる。

あの時に思い描いた「幸せ」は手に入ったのかい？

静寂の中で彼のギターが響く。
そして、僕はぐったりとした気分でこう答える。

俺はいまだにギターを弾いているよ。

音楽で世界が平和になるわけじゃぁない。
でも、音楽の力が一人の人生を変えることくらいは出来るみたいだ。

享年６７歳。
合掌。

＜10/10 MASH＞
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