《ハウリンメガネ》
はい!「イーノでひも解くロックの歴史」!
今回は前回の最後で触れた通りサイケの時代でも
ルーツ、ブルースの方へ接近しようとした人達の話を……
{ 編集長「MASH」}
うーん……
《ハウリンメガネ》
何を唸ってるんです?腹でも壊しましたか?
季節の変わり目、三寒四温で気温の変化が激しいですからねぇ。
{ 編集長 }
違うよ!いやぁ前に
ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」
を話に出したじゃない?うーん……
《ハウリンメガネ》
ええ、覚えてますよ。
{ 編集長 }
俺、ビーチ・ボーイズの作品だと
「ペット・サウンズ」の後の
「ワイルド・ハニー」(メイン写真)
が一番好きなんだよ。
《ハウリンメガネ》
はいはい、昔から仰ってましたね。
{ 編集長 }
ところが前の話ではそこに一切触れてない!
《ハウリンメガネ》
……なるほど。
{ 編集長 }
だから「ペット・サウンズ」以降のビーチ・ボーイズ
そしてその影響について話してから君の話に移ろう!
《ハウリンメガネ》
ええ~。
いや確かに「ワイルド・ハニー」は名盤ですから、
それも吝かではありませんが……
{ 編集長 }
安心しろ!ちゃんと話はつながるから!
《ハウリンメガネ》
ほんまかいな……
{ 編集長 }
うむ。じゃあ、進めていいな?
《ハウリンメガネ》
へい。「ワイルド・ハニー」って
「スマイリー・スマイル」の後、
ブライアン(・ウィルソン)が完全にナーバス
と云うかヘベレケになっちゃってた時期ですよね?
彼の状態もあってか、作曲はほぼ全曲ブライアンだけど、
アレンジはブライアン以外のメンバーが主体だったみたいですね。
{ 編集長 }
ソコがイイんだ(笑)!
《ハウリンメガネ》
そのせいか、「ペット・サウンズ」での
あのカラフルなアレンジは確かになりを潜めてるんだけど、
彼らの武器であるコーラスを主体に、
シンプルなバンドサウンドでまとめてて、凄くいい塩梅ですよね。
しかもベースラインの動きとか、
コードのアレンジとかは見事にビーチ・ボーイズ印のままで。
{ 編集長 }
やっぱり、バンドマン、特にロックやブルースをやって来た・・・
そんな俺たちには、このバンド・サウンドは刺さるよ!
《ハウリンメガネ》
「ペット・サウンズ」の評価が高いせいか、
「ビーチ・ボーイズ=ブライアン」
ってイメージで語られがちですけど、
これってビーチ・ボーイズがブライアンのワンマンバンドじゃなかった
って十分過ぎるくらい現している盤ですよね。
ブライアンの曲やアレンジをメンバーがちゃんと理解した上で
「ビーチ・ボーイズ」を形作っていたという。
{ 編集長 }
そうなんだよ。
何か「ブライアン神格化」って嫌じゃあない?
俺はバンドとしての「マトマリ」とか「タイトさ」とか
その辺りをもっと評価するべきだと思うんだよね。
実際バンド内で話し合って決めたアレンジなんかもあるしさ。
《ハウリンメガネ》
確かに音も太くてタイトですよね。
というか、もともとサーフロックのバンドとして
ずっとやっていたメンバーなんだから
当然ヘタなわけないんですけど。
{ 編集長 }
下手とかソー言う話じゃなくて
この人たちの「フェンダーギターの音」が
そもそもイイでしょ(笑)。
そこに「あのコーラスワーク」と
全員が歌えるボーカル・スタイル!
《ハウリンメガネ》
同じようにサーフロックシーンにいた
ベンチャーズとかシャドウズは近年再評価されてるじゃないですか。
でもビーチ・ボーイズってどうしてもブライアン、
というか「ペット・サウンズ」のイメージのせいか
バンドとしての評価ってあんまりされてない気が……
{ 編集長 }
いやいや、それこそ大問題でさ。
初期のライブ盤もイイし、
俺の好きな「パーティー」なんか
もうビートルズやストーンズ
そしてボブ曲まで満載で(笑)
とにかく最高よ!
《ハウリンメガネ》
あー、そうか。
「ペット・サウンズ」を作っちゃたことで
サーフロックという土俵からビートルズと同じ土俵
つまり「ロックの先頭集団」に立っちゃったと。
そりゃいくら強い横綱でも
「雷電為右衛門」と比較されちゃキビシイよねぇ。
{ 編集長 }
まあ、前にも言ったが
ビートルズとビーチボーイズって
アメリカでは同じキャピトルレコード所属でさ。
相乗効果で売れていけばイイはずなんだが
ビーチボーイズは過酷な契約で
「バンバン出せ!」と言われていてね。
一方のビートルズはイギリスから来る音を
アメリカ編集のLPにしたり独自シングルを出したりして
やっぱりリリース枚数を稼いでる(苦笑)。
本国アメリカの横綱なのに扱われ方が小結級・・・。
《ハウリンメガネ》
(笑)とはいえビーチ・ボーイズも横綱であるわけですよね。
ちゃんとこうやって後世に影響を残してるわけで。
{ 編集長 }
その通り!この頃のビーチ・ボーイズに影響されたバンドが
それこそ、たくさんいるわけさ。
その中でも彼らの影響モロ出しだったのがこれ!
「ザ・サード・レイル」!
《ハウリンメガネ》
えーっと、すみません。
私、不勉強でこの人たちの事、全然知らなかったです。
{ 編集長 }
知らんで当然。
ロックのツナガリを紐解かんと絶対に出て来ない・・・
そんなグループだからね。
《ハウリンメガネ》
ちょっと調べただけなんですが、
この人たちは職業作曲家の集まりだったんですか?
{ 編集長 }
そうそう。
でもキャロル・キング然り、
この時代の裏方は皆ミュージシャンだからさ。
イギリスでは君の大好きなジミーペイジ先生もそうでしょ?
《ハウリンメガネ》
イエス!
そう言えば「ザ・ディープ」もセッションマンの集団でしたけど、
やっぱり音楽業界の最前線で仕事をしていたから
サイケの流行にも敏感に反応したのかな?
{ 編集長 }
この時代って録音技術も目まぐるしく進むじゃない。
だから、面白がっていたのも確かだよね。
NYの一部の先鋭集団だけがアート的で
シスコとかは間逆でアシッド的でしょ?
それ以外は録音技師やミュージシャンによる
「遊びの部分」ってのが多いんだよ。
《ハウリンメガネ》
なるほど。
オリジナルアルバムはこの一枚だけなんですかね?
確かに仰る通り、「ペット・サウンズ」以降のビーチ・ボーイズ直系!
ってのはもちろん分かるんですが……
ビートリーですよねぇやっぱり(笑)。
{ 編集長 }
まあ、そこがやっぱり入って来ちゃうワケ。
自然とビートルズが!
《ハウリンメガネ》
いやぁ、最初は「ペットサウンズ」的な楽器の使い方だなぁ
って思ったんですが、曲が進むにつれ、
どんどんサージェントを彷彿とさせる音が聴こえてきまして(笑)。
こればかりはしょうがないですよねぇ。
ビートルズがあの時代のトップランナーだもん。
{ 編集長 }
今では考えられないくらい、あの時代
「世界中がビートルズ!」なんだよ。
「追いつけ追い越せ」と言うよりも
「真似て幸せ!」って云うレベルでさ(笑)。
硬派な奴らも案外ミーハー的な動機でね。
《ハウリンメガネ》
ま、アレンジはそうであっても、
曲自体はアメリカンミュージックのグッドメロディが盛りだくさん!
そこは流石アメリカンミュージシャンです。
A面もB面も「もうちょっと聴いてたいな」
ってところで終わっちゃうのがズルいですね(笑)。
やっぱりアメリカの作曲家はルーツが身体に入ってるよなぁ。
{ 編集長 }
うむ、その事が最初の話につながるんだよ!
《ハウリンメガネ》
と言いますと?
{ 編集長 }
「ヤング・ラスカルズ」!
これで分かるだろ?
《ハウリンメガネ》
もちろん。
(フェリック・)キャバリエ先生擁する、
あのロッキン・リズム&ブルースバンド。
{ 編集長 }
この彼らの「1st」に収録されてる大ヒット曲
「グッド・ラヴィン」の作曲者が
「サード・レイル」のアーティ・レスニック なんだ。
《ハウリンメガネ》
え!そうなんですか!
(メガネ、ジャケット裏を確認する)ホントだ!
{ 編集長 }
な?ちゃんとつながっただろ?(笑)
《ハウリンメガネ》
はぁー、世の中、面白いもんですねぇ。
R&Bバンドのラスカルズがサード・レイル経由で
サイケ期のビーチ・ボーイズに繋がるとは……
しかしそのヤング・ラスカルズの1stですが、大名盤ですよね。
流石キャバリエ先生がいたバンド。
{ 編集長 }
おっと、この盤はキャバリエ先生だけじゃなくて
メンバー全員が歌って、しかも変化も出ているぞ?
《ハウリンメガネ》
そりゃ聴けばわかりますよ。
そもそもジャケ裏の曲リストにわざわざ
「リードボーカルが誰か」まで書いてるじゃないですか!
しかし、ラスカルズはみんな歌上手いですね!
コーラスも息ぴったり。
{ 編集長 }
ビートルズのジャケにも
「ボーカル」
を書いてあるLPがあるでしょ?
あの表示ってヤリタイんだよ。みんな!
《ハウリンメガネ》
分かるなぁ。しかし、演奏も凄まじい!
全員リズムの抜き差し自由自在!
ディノ・ダネリのドラムなんかキース・ムーン級のドコドコっぷり!
キース・ムーンと違って抑える時はちゃんと抑えてるけど(笑)。
{ 編集長 }
彼のドラムはやっぱり
「経験豊かな実力者が叩く音!」
だよな。元々はジャズを叩いてたらしいぜ。
《ハウリンメガネ》
ディノを例に出しちゃったけど、
この人達、飛ばす時と抑える時の
ダイナミクスのつけ方が抜群に上手いですよね。
この辺ってやっぱり歌心から来るのかね?
歌のダイナミクス、凄いじゃないですか。
アメリカンな拳が効いてるじゃないですか(笑)。
{ 編集長 }
歌と演奏はシンクロしてくるからね。
まあ、コレだけ歌えりゃ
演奏はグルーヴィーになって当然だよ!
《ハウリンメガネ》
選曲もいいですよね。
ボブの「ライク・ア・ローリング・ストーン」
その直後にウィルソン・ピケットの「ムスタング・サリー」
が入ってくるこのセンス!
しかもこれが「1st」だってんだからイヤになる(笑)。
この後には大名盤「グルーヴィン」を出すわけだし・・・。
{ 編集長 }
そうなのよ!デビュー盤がイイって本物の証しだよ。
ビートルズやボブは勿論だけれど
ストーンズ、ヤードバーズ、キンクス、フー、Zep・・・
アメリカではこのラスカルズやバーズ、デッド、CSN・・・
《ハウリンメガネ》
確かに!
{ 編集長 }
君の言う「グルーヴィン」では、また進化した彼らが聴けるよね。
とにかく、ラスカルズは捨て難い重要なグループだよ!
《ハウリンメガネ》
しかし、今回のこの3組は全員歌というか、
コーラスワークが抜群ですよね。
{ 編集長 }
あれ?気づいてない?
今回のこの3組、全部アメリカのバンドなんだよ!
《ハウリンメガネ》
……おお!確かに!
{ 編集長 }
いつも言うけれど
「アメリカン・バンドにはアメリカン・ミュージックがある!」
わけだよね。
《ハウリンメガネ》
そっか、コーラス、ドゥーワップ、ゴスペル……
アメリカって歌の国なんですね。
{ 編集長 }
そうそう。
もちろんブルース、ジャズ、カントリーもね。
《ハウリンメガネ》
で、そこで育ったミュージシャンがやる音楽は
ビートルズからの影響は多大でも、
そこはビートルズとは一味違うぞ、と。
{ 編集長 }
そこがアメリカン・バンド最大の魅力だよ。
な?ばっちり繋がっただろう?
《ハウリンメガネ》
ええ、ええ、お見事です。
{ 編集長 }
そうだろう?ハッハッハ!
《ハウリンメガネ》
ただ、あのですね、編集長?
{ 編集長 }
ん?
《ハウリンメガネ》
確かに「ヤング・ラスカルズ」は素晴らしいR&Bバンドなんですが……
{ 編集長 }
うむ!ルーツもちゃんと入ってるしバッチリだよな!
《ハウリンメガネ》
私が今回挙げようとしてたバンドは別のバンドでして……
{ 編集長 }
なんだよ!それを早く言え!
何が出てきてもいいぞ!
センバツも佳境だしプロ野球も始まったし
バッチこ~い!
《ハウリンメガネ》
いや、もう今回は長くなったのでまた次回に……
{ 編集長 }
えっ?
<続>