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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え!」(第14回) ボブ・ディラン来日記念!「今こそ、バーズを語る(その2)」

2023-04-01 10:31:14 | 『ハウリンメガネ』コラム集

ハイ!読者諸賢、ごきげんよう!
もはや来週にはボブの日本ツアーも始まるという4月の気配に浮足立つハウリンメガネである。

前回に引き続き今回はクロスビー追悼、バーズの歴史振り返りと称し、ビートルズになろうとしたバーズがどのような変遷を辿ってビートルズの二番煎じではなく、バーズとしてその名を残すこととなったのかを紐解いていく。
今回のテーマは中期前半の名盤二作である。

前回紹介した『ミスター・タンブリンマン』、『ターン・ターン・ターン』(共に65年作)発表後、バーズはジーン・クラークの脱退という危機を迎える。

フロントマンであり、メインソングライターでもあったクラークの脱退は大きな痛手である。なにせ、バーズというバンドの武器であるビートリーなコーラスワークに制限がかかるのだ。
残ったメンバーで成立する方法を模索しなくては——
このトラブルがロジャー・マッギン、デヴィッド・クロスビーという才能に奮起を促し、結果生まれた最初の作品が66年作『霧の5次元』である。


これ、個人的にかなり好きなアルバムなのだ。単純にクラークの脱退でコーラスワークが困難になったというのもあるだろうが、曲やアレンジ、演奏にも荒々しいパワーがあり、それまでのビートリーな美しさを主題としていたバーズとは趣きを異とする、荒削りな魅力に満ちたアルバムになっている。

地を這うようなベースから始まるB1「霧の8マイル」での間奏部。オルガンの奏でる怪しいコードにのって繰り広げられる、エレクトリックマイルスのような不穏さに満ちたプレイがたまらない。

A4「I See You」でのスイングするリズムにノッて繰り広げられる、クリーンなギターでのパンキッシュかつフリーキーな演奏は今の時代にこそマッチする音像だし、そこにサイモン&ガーファンクルのようなハーモニーで切なさを倍加させた歌メロが乗るさまは涙がちょちょぎれんばかりに心の琴線を揺さぶる(今風に言うなら"エモい"というやつであろうか)。

B5「2-4-2・フォックス・トロット」はビートルズのカム・トゥゲザーの元ネタになったようなギターリフがダーティーかつアーシーに響く、サザンロックのような趣きの曲にジェット機のエンジン音とモールス信号の音を混ぜ込んだ、以降のアートロックの先触れともいえるサウンド。

どの曲も荒削りながら、演奏に緊張感があり(ある種キング・クリムゾンに通ずるものすら感じさせる)、アメリカンサイケの良作に共通する、アーシーさと実験的なアプローチのバランスの取れた良いアルバムなのである。

この作品でアプローチの幅を大きく広げた彼らがこの翌年、67年に出したのが次の『昨日よりも若く』。


こちらは4人体制に慣れたのか、ビートリーなアレンジも復活しており、初期の美しさを彷彿とさせる面もあるのだが、それと同時に前作同様、実験的なアプローチとアーシーな音も多い(時期的にビートルズもサイケ真っ只中なので間違いなくビートルズの影響があるだろうが)。

A3「C.T.A.-102」のエンディングではバンドの演奏から急にラジオショウに変わったような演劇的な表現を試し、B1「Thoughts and Words」、B2「マインドガーデンズ」ではテープの逆回転を効果的に取り入れ、A6「エブリバディ・ビーン・バーンド」でのインド音階を使ったギターソロなどなど、この時代のサイケあるあるなアプローチが盛りだくさん。
だが、ここでも重要なのはバーズのバランス感覚。

前回、バーズとはビートルズとアメリカンフォークを最高のバランスで融合させたバンドであると書いたが、この時期のバーズを表すなら、サイケ時代のビートルズとアメリカンルーツロックの融合体。

詰まるところ、彼らの良さとは自分達の好きなものを自分達が得意とするもので表現するそのバランス感覚が生み出しているのである(だからこの盤もただサイケな作品ではなく、ビートリーな美しさと、サイケデリックの面白さ、そしてアーシーな良さがバランスよく織り込まれており、故に時代が変わっても廃れずに盤が残っているのである)。

さて、『昨日よりも若く』の重要なポイントとしてカントリーテイストのA4「タイム・ビトウィーン」とB4「ザ・ガール・ウィズ・ノー・ネーム」が収録されていることを挙げておかねばなるまい。
両曲ともベースのクリス・ヒルマンが作曲した曲だが、この2曲、後にバーズに正式メンバーとして加入するクラレンス・ホワイトがセッションマンとして参加しているのである。

そう、カントリーロック期のバーズを支えた名ギタリストであるクラレンス・ホワイトが初めてバーズの歴史に登場するのがこのアルバムなのである。

このアルバムの後、バーズはマッギンと他のメンバーの軋轢によって徐々に崩壊していき、その姿をビートリーなアメリカンロックバンドからカントリーロックの大御所へと変化させていく。

なぜ彼らはその姿を変えていったのか、そしてバーズとしての終焉とその後の彼らが残したものについてはまた次回のお話。

んじゃ、また次回!