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久しぶりに再開するRock盤コーナー、引き続き今回はクリフ・リチャードの2ndアルバム「Cliff Sings」(UK Org MONO)をご紹介します。
このアルバムがリリースされたのは、今から66年前の11月。レコードに針を落とす前に、まずは当時の彼の状況について軽く触れておきましょう。1958年にシングル「Move it」で鮮烈なデビューを飾ったクリフ。この曲は2位まで上昇し、前回紹介した1stアルバム「Cliff」も4位まで上昇しました。この勢いで快進撃を続けると思いきや、その後、何枚かのシングルを出しますが、その度にチャートの順位は下がっていきます。
「次こそヒット曲を出さねば」という状況の中、クリフは「Serious Charge」という映画に脇役として出演し、そのテーマソングを歌う事になります。それがあの「Living doll」です。この曲は1959年にイギリスではもちろん、多くのヨーロッパ圏で1位を獲得する超大ヒットとなり、彼の人気を確実な物とします。ただその曲調自体、ロックンロールのワイルドさは無く、アコギメインの非常にシンプルなポップソングとなっており、当時のクリフは、ミュージシャンというよりは「いわゆるティーンアイドル」的な位置づけに定着してしまいます。
これは本人の音楽的思考と言うより、レコード会社、プロデューサーの戦略が強く反映されていたのでしょう。バックにシャドウズという圧倒的な「本物のロックバンド」がいたからこそ、今でもブリティッシュロックの元祖として名前は残っているものの、もしシャドウズの存在が無ければ、単なるティーンアイドルとして短命に終わっていたのかもしれません。さて、続くシングル「Travellin' Light/Dynamite」も1位を獲得し、向かうところ敵なしの状況でリリースされたのが、今日紹介する「Cliff sings」なのです。
では、針を落としてみましょう!いきなり「Blue Suede Shoes」そう!カール・パーキンスの代表曲からスタート!シャドウズの非常に抑えの効いた演奏にのってクリフは歌いますが、この曲における彼の歌い方は完全にプレスリーを意識しております。続く「The Snake and the Bookworm」「I Gotta Know」では、「ロックンロール」というより「カントリー」に近いアレンジが続きます。早くも前作から方向性を変えてきたか!と思った矢先、突然ストリングスの音が聞こえてくるではありませんか!そう!5曲目「I'll String Along With You」では、シャドウズではなく、プロデューサーである「Norrie Paramor」のオーケストラをバックに歌っているのです!そこにはロックンロールの面影はなく、パット・ブーンやアンディ・ウィリアムス等のポピュラーシンガーを意識していることがが分かります。
これは僕の推測なのですが、当時のレコード会社の戦略として「ロックミュージック」はこれ以上流行らないと判断したのではないでしょうか。と言うのも当時、ロックの本場アメリカでは、「リトル・リチャードが牧師になるため引退」「バディ・ホリーの死」「プレスリーの徴兵」等により、少しずつ勢いが失われており、よりポップなティーン向けのサウンドが少しずつ台頭し始めます。そこに目を付けたレコード会社が、早い段階で、クリフにロックのイメージを脱却させ、カントリーやフォーク、ポップス等様々なジャンルを取り入れていたのではないかと思います。
確かにその後数年、ポップス路線によって何曲ものシングルで1位を獲得した彼なので、ある意味では、その裏方による読みは正解だったのかもしれません。しかしこの流れは、ご存知1962年にビートルズがデビューした事で一気に流れが変わってしまいます。ここを話し出すともっと長くなるので、それはまた別の機会にお話ししましょう。
さて、盤の話に戻しますが、オーケストラを従え、アメリカのポピュラーソングを歌うには、当時のクリフでは明らかに技量不足というか「歌わされている感」が否めません。後々の彼の活躍を考えれば、このアルバムにおける「新たな試み」は必要だったのかもしれませんが、聴き終えた感想としては、「もっとロックが聴きたい!」という気持ちになることでしょう。僕のようなクリフ・リチャード好きからすれば、「まだまだ成長段階の記録」として「持っていても良い」とは思いますが。「これから初めてクリフを聴いてみよう」という読者の方には、別のアルバムをおすすめします。ちなみにこのアルバムも、当時イギリスで2位まで上昇しているので、いかに当時の彼が人気者だったのか!が良くわかります。ここから、クリフ・リチャードの音楽はどのようになっていくのでしょう!
では、次回もお楽しみに!
《Starman★アルチ筆》
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