「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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明石のブルースマン「ハウリンメガネ」が贈る… どこまでもヴァイナル中毒!(第27回)「クラフトワーク編」

2020-05-14 08:46:00 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

やあ、読者諸賢。気分はどうだい?

ハウリンメガネである。 

ここ最近、高齢ミュージシャンの訃報が相次いでおり、もう「そういう時代」なのだな…という実感をひしひしと感じている今日この頃の筆者である。

つい先日、元クラフトワークのフローリアン・シュナイダーが亡くなったそうだ。
実は筆者、彼らの熱心なファンとまではいえないものの、「お嫌いですか?」と問われれば「好き!」と即答するくらいには彼らの音楽が好きなのである。故にこのニュースは結構ショックだった。

今回はシュナイダー氏への追悼の意を込め、クラフトワークの思い出話といこう。

筆者が小学五年生の時、町の電器店を営んでいた大叔父がポケットラジオをくれた。
今思えば、どこかの販促品だったであろうチープなものだったのだが、当時の私はこの「自分のラジオ」を大変気に入り、夜な夜な選局ダイヤルを弄り回しては聴こえてくる音に耳を澄ませていた。
そんな筆者に、今も付き合いのある友人Aが言った。
「兄貴が聴いてるラジオが面白いんだよ。真夜中なんだけど」
その番組こそが2020年現在もTBSラジオで放送している「伊集院光・深夜の馬鹿力」であった。
ハマった。面白かった。

伊集院さんのトーク力と妄想力(ご本人曰く被害妄想の誇大妄想)を両輪に、これまた負けず劣らずのリスナーのバカハガキを燃料に突き進むこの面白重戦車はもはや筆者にとって、聴く「サイケデリックドラッグ」ですらあった。

そして筆者がクラフトワークの音に初めて触れたのが何を隠そう、この「深夜の馬鹿力」だったのである(一時期、番組のエンディングテーマがクラフトワークの「マン・マシーン」だったのだ。この番組、音楽主体ではないのになぜか選曲が妙に秀逸で、ハーブ・オオタやら、スクリーミング・ジェイ・ホーキンスやら、アート・オブ・ノイズやら、小沢昭一さんやら、白木みのるさんやらと古今東西を問わぬ凄まじいごった煮で筆者の音楽感に強い影響を与えたのだが長くなるので割愛)。

最初は「このし〜まし〜ま言ってる音楽はなんだろう?」と思った。
時代は小室サウンド全盛期。バキバキのシンセが荒ぶる音に慣れていた筆者は毎週エンディングで流れる「し〜まし〜まし〜ま〜し〜まし〜ん」というフレーズに笑いながら、簡素な電子音が紡ぎだす音楽がだんだん好きになっていった。

たしかクラフトワークのアルバムを初めて買ったのはそれこそマン・マシーンが収録されている「人間解体」だったと思う。
ロック小僧だった筆者だが、テクノも面白いなぁ、と、その後も「レディオ・アクティビティ」や「ヨーロッパ・エクスプレス」などを買いつつ、ドラムマシンやシンセに手を出し、テクノもどきを作っては独り御満悦だったのだが、やはりギターやバンドが楽しく、結局テクノは好きなサブジャンルの一つとして、しばらく離れていた……

衝撃は突然来た。

もういつだったか忘れたが、まだ湘南は六会に「ジェリーズ・ギター」が実存していた頃の話である。
いつもの如く店に遊びに行った私に当ブログ編集長「Mash氏」がこう言った。

「今日から45回転ショウをやる!」

そう!当ブログの読者ならお馴染みであろう、45回転、シングル盤を大量に店に置いていたのである!
「これいいなぁ!」
「いや!こっちはもっと凄いんだよ!」 
「うわぁ!なんだこりゃぁ!」
と、Mash氏、スターマンAL、私の三人でワイワイやっていたのだが、途中でMash氏が「これ、凄くいいんだよ」と、ある盤をターンテーブルに置いた。

それこそが写真の「コンピューター・ラブ」であった。
この盤を聴いた時の衝撃は未だに忘れられない。

「こんなにも美しい曲だったのか…」

オリジナルはアルバム「コンピューター・ワールド」に収録されている曲で、当然筆者もCDでもっていたのだが、全く別物にしか聴こえなかった。

テクノについて語るとき「無機質・無感情」というという言葉で語る人もいるが、こっちに言わせりゃ「それは聴いてるあんたが無感情に聴いてるからだよ!」と言いたい。

このシングル盤の音を聴いてごらんよ。
こんなセンチメントなドラムマシンの音を聴いたことはない。
シンセサイザーがこうも感情的な音を出せることを私は全くわかっていなかった。
衝撃的な三分間が終わり(原曲は七分程度あるが、このシングルはレディオエディットで縮めてある)、即座に「譲って!」とおねだりしたが、「俺もこれ一枚しかないからダメ!」と言われてしまった筆者。

探しておくよ、とのMash氏の言葉を何度も念押しし、一年以上経ってやっと手元に来たこの盤は今でも筆者の重要アイテムの一つとして棚に飾られているのである。

最近書いてなかったが、デジタル音源とアナログ音源は本当に別物だ。
筆者がそれを思い知ったアイテムがこの「コンピューター・ラブ」だと言っていい。
その意味において、クラフトワークは筆者の恩人なのだ。

今回はクラフトワークのオリジナルメンバーにして、素晴らしい音楽家だったフローリアン・シュナイダー氏に哀悼の意を。

《ハウリンメガネ 筆》


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