『空翠庭陰に落つ』
孟浩然の作った『題義公禅房』の一部分です。
義公習禅寂,結宇依空林。
義公禅寂(ぜんじゃく)を習わしとし 宇を結んで空林(くうりん)に依る
戶外一峰秀,階前衆壑深。
戸外一峰秀で 階前衆壑(しゅうがく)深し
夕陽連雨足,空翠落庭陰。
夕陽雨足に連なり 空翠(くうすい)庭陰(ていいん)に落つ
看取蓮花浄,応知不染心。 蓮花(れんか)の浄を看取せば まさに不染の心を知るべし
現代語に訳すと
義公は静かに瞑想することを習わしとするため
人気のない山林を背景に庵をかまえた。
庵の外には一峰ひときわ高い峰がそびえ
きざはしの前には深い谷が迫っている。
夕陽の光が差し込んで通り過ぎる雨糸を照らし
塵を洗い落とされた木々の緑は庭の土に清らかな水氣を滴らせる。
泥に染まらぬ蓮華の清らかさを見れば
汚れに染まらない心の境地がどのようなものか分かるだろう。
となります。
深い、、、
『夕陽連雨足,空翠落庭陰』の部分が一番盛り上がるところです。
雨が降り山の草木の塵を洗い清め、その雨もやんだ頃、夕陽が差し込み、翠から滑り落ちる水の糸を照らし輝かせ、その清められた水滴が庭に滴り落ちる。
神々しい情景ですね。
これは『悟り』の境地を表しているのです。
ふーむ、、、。
心が穏やかになっていくようですね。
単に『空翠落庭陰』だけをそれぞれが解釈しながら書いても良いのですが、詩の内容に踏み込んでいくと、その奥深さとその素晴らしさに軽い震えさえ覚えてしまいます。
書に命を吹き込む作業として、詩の全体像に迫り、自分の身に置き換えて考え、紙に向き合うことが必要でしょう。
課題のお手本渡す際には、分かりやすい説明をしていますが、競書期間中、稽古が進んでいく中で、詩の内容についてもお話しできればと思っています。
さて、次回からはそれぞれの漢字について解説をしていきたいと思います。