お年を召した方が筆で文字を書くと、線が震えてしまうことがあります。
ご本人はそれをとても気になさるのですが、わたしはそうは思いません。
それは年輪を重ねて作り上げてきた証。
素晴らしい線だと思います。
書道の世界では、60.70は『はなたれ小僧』ですからね(笑)
80.90になって、長き葛藤の末に作り上げてきた内面を、身体に鞭打って(少しオーバーかな?)筆をとって書きあらわそうとする行為は、自分のためだけではなく、後に続くものへの道標として遺そうとする意識からなのだと思うのです。
もちろん芸術家の作品は、その隆盛期に書かれたものが一番眩しく光り輝いています。
しかし、晩年の作品もいぶし銀のような輝きがあり、とても魅力的なのです。
ありがたいことに、今はまだ体調も問題なく、線も震えたりはしませんが、二十年ぐらい経てば、否応無しに震えてくるでしょう。
書けたはずの線がかけなくなる、、、
そこに絶望してしまうのか、新たな面白さを求めるのかは、大きな違いなのです。
手が震えたって、人間の価値が下がったわけじゃない。
それはそれまでの人生を精一杯生きてきた結果です。
人生で培ってきた魂を、震える手で筆を持ち、じっくり書けば良いのです。
面白い線がきっと書けるはず!
自分の変化に合わせて長いこと楽しめるのも、書道のよさなんです。