私的解説をいたします。
全体的に右半分が太く、重くなるはずなのにそうならないのは、右肩あがりと横画の右半分が左半分より短いからです。
一番長い横画は、とめの長さを計算して右肩に上がった傾斜をさげてとめに入らないと間に合わないことになります。
つまり、オーバーランになるのです。
気をつけてくださいね。
『羽』の4画目の頭のポチっとなっている点は、汚れです。
コピーのお手本は修正してありますが、これは原本なのでそのままの状態です。
原本見て書いた方の中には、このポチっ、まで再現しようとしたものがありましたが、そこはないものとしてご覧ください。
『羽』の横画も点も、『卒』の横画と同じ角度で右肩に上がりになっています。
この角度が統一されていることで、文字に一定の規則性が生まれ、右肩上がりによって与えられたエネルギーが、コントロールされ、美しさを醸し出す大きな要因になっています。
『卒』の1画目の点は、『羽』の間に少し入るように打ちましょう。
ここができないと、『羽』と『卒』が離れてしまい、『翠』の一体性が無くなってしまいます。
最終画の縦画は、心をおさめるように、じっくりと滲むぐらいの速度で書きましょう。
墨の色が濃ければ、仕上がった後、奥行きが出てくるはずです。
筆勢の変化によって、奥行きの度合いを無限に変えることもできるのです。
例えば『羽』の1画目と4画目の転折後の縦画は、スピードを変え、太さも変えることによって、『羽』の左側手前に、右側を奥に感じさせています。
逆に『卒』の7画目は奥に、8画目は手前に感じさせてくれます。
これは重なった部分特有のものだと思われますが、見る者に刷り込まれている書き順が影響しているのだと思います。
平面に書いたものなのに、立体感ある書にする事ができるのです。
それをCGよろしく、頭の中でぐるっと回転させてみるのも面白いですね。
そんな造形物を作った書家の方もいらっしゃいますが、創造力の源は同じなのかもしれません。
『翠』は和翠塾の『翠』です。
和翠塾創設者の高橋鵞翠の『翠』からいただきました。
和翠塾で雅号を受ける方には『翠』がつくことになります。
それだけに、真正面から向き合っていただきたい漢字なのです。
頑張りましょう〜