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タコ・サラダとウーゾで大満足 【連載】呑んで喰って、また呑んで⑲

2019-11-06 09:48:20 | 【連載】呑んで喰って、また呑んで

【連載】呑んで喰って、また呑んで⑲

タコ・サラダとウーゾで大満足

●ギリシャ・アテネ

山本徳造 (本ブログ編集人) 

 

 

 メリナ・メルクーリ主演のハリウッド映画『日曜は駄目よ』の舞台になった港町ピレウスの海水浴場は、地元民で賑わっていた。観光客など皆無だろう。「これからまたアテネに戻るのか」と思うと気が重い。
 なにしろアテネは小汚い街である。アフリカの行き帰りに3、4回は滞在しているが、見るところと言えば、パルテノン神殿ぐらいか。しかし、そんな退屈なアテネにも楽しみはあった。タベルナである。ま、居酒屋と言ってもいいだろう。

 昼間はシンタグマ広場のカフェでビールをチビリチビリとなめながら時を過ごす。で、夜は「待ってました!」とばかりにタベルナに出没するのだ。別に行きつけの店などない。外に出したテーブルでお客が楽しそうに呑み、美味そうに食べていれば、まず間違いはないだろう。これで外れだったことはいまだかつてない。
 ギリシャ料理は、ユネスコの無形文化遺産に登録されていることからもわかるように、地中海料理としての地位を築いている。私がタベルナでまず注文するのはラム肉のスプラギ。肉を鉄串に刺して焼いたものだ。薄い塩味だが、血圧の高い人にはちょうどいいだろう。そして、もちろんビールも。
 代表的なギリシャ・ビールというと、フィックス、ミソス、アルファが有名。他にもティノス島のニソスとサントリーニ島のヴォルカンは、ビールコンテスト「ヨーロピアン・ビア・スター」で銀メダルを獲得するなど、その評価は年々高まっている。だから、ギリシャに行けば、ぜひ様々なビールを試してもらいたい。
 さて、スプラギで胃が落ち着いたところで、今度はサラダだ。トマト、キュウリ、紫玉ねぎの3つの野菜が中心で、フェタという山羊のチーズも乗せる。このサラダにオリーブ油とレモン汁をかけて食べるのだ。これだけでも美味いが、私がよく注文したのは、ぶつ切りにしたタコが入ったサラダだ。
 タコはニンニクと一緒にほんの少し炒めてある。このタコが何とも言えない。酒のツマミに最適だ。しかし、タコのサラダを食するときは、ビールではなく、ウーゾに限る。
 ギリシャの代表的な国民酒で、アルコール度数は約40度。キプロスでもつくられているが、ブドウやレーズンの蒸留酒にアニスの香りを加えた薬草系のリキュールだ。グラスに無色透明のウーゾを注ぐ。ストレートでもよいが、水で割ると科学実験みたいで面白い。あっという間に白く濁るのだ。
 学生時代にフランスのアブサンという強烈な酒を呑んだことがある。残念ながらアブサンは製造禁止になったので、今は呑めない。ほんのりと甘く、独特の癖がある。そして水で割ると白く濁るのだ。ウーゾを始めて呑んだとき、このアブサンを思い出した。
 タベルナでタコのサラダをつまみにウーゾを何杯もお代わり。うーん、美味かったなあ。この原稿を書いていると、無性にタコが食べたくなった。そしてウーゾも。久しぶりにアテネに行ってみようか。あの退屈な街に。

 


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